#恋·恋
「…───なんだ」
帰る為踵を返そうとしたと同時に背後から低い声が届いた。
いつからいたんだろう
帰ってきたことに気づかなかった
「あ、蓮…お疲れ」
魁斗が蓮に労いの言葉をかける。
声色に戸惑いが含まれてるのがわかった
…だけど、蓮はその言葉に耳も貸さずただ私を見据えていた
『………』
「何があった」
もう一度、今度は私に向けてそう言った。
『なんでもありません。…私、帰ります。蓮さん、昨日はありがとうございました。そして色々ご迷惑をおかけしてしまって申し訳ありません。…失礼します』
強い視線から目を逸らし、これ以上話さないよう淡々と謝罪とお礼を言い彼の横を通りすぎようとした。
「あ、ひとみちゃっ…」
ガシッ
「まだ話終わってねえ」
腕を掴まれた。
『ベッドも使わせてもらいすみません…』
誰の顔も見たくなくて下を向いたまま呟く。
「違う」
『………』
お願い、もうこれ以上話したくないから帰らせて…