まさか…結婚サギ?
途中下車して、駅から少し歩いた所にあった個室居酒屋に入る。
いつものように貴哉と相談しながら注文をしていく。
姉の事を話せて、しかも了解してもらえて由梨は貴哉に対する警戒心がほどけていった。
お酒も飲んでいたので、気がつけばぴったりと寄り添うように由梨は貴哉と隣同士だ。
(あれ?…向かいに座ってなかったかな…)
ぼんやりとそんな事を思うが、芸術的なまでに整った顔を見ていると、うっとりしてしまい冷静な判断はどこかにいってしまったかのようだ。
「由梨、そろそろ帰ろうか」
「はい~」
少し立ち上がるとふらっとするので、少しいつもより飲みすぎたかもしれない。
「由梨はお酒があんまり強くないんだね」
くすっと笑う気配がする。
「そうかも…」
手を繋いだまままた電車に乗り、警戒心も薄れ酔った由梨には貴哉が同じ方向の電車に乗ったことに意識が向かなかった。
「どっち?」
「あっちです」
由梨は帰省本能が働いたのか、貴哉に支えられるままに家にたどり着いた。
「ただいまぁ…」
「おかえりなさい…あら…」
「紺野 貴哉といいます。はじめまして」
ぼんやりと、そんなやり取りを聞いていると
「すみません、すこし飲ませ過ぎてしまって」
「あらあら、申し訳ないのはこちらです」
母がいい
「おとうさーん、あやー」
と母が父を呼んでいる。
「お父さん、亜弥ちょっと」
「あら、由梨お帰り」
「亜弥は由梨を連れていって」
由梨は亜弥につれられて、水を飲まされてそのままお風呂に入れられる。
「あとで部屋着置いておくからね!」
亜弥はぼんやりしたままの由梨をおいて、また去っていく。
お風呂で次第に酔いが覚めてくると…
(…って…何気に…連れてきちゃったじゃない!!)
由梨はあわててお風呂から出ると、家用のロングワンピースを身に付けて、居間に向かう。
そこには父と母と姉と…そして貴哉。
「あ、由梨。貴哉くん、今日は泊まってもらう事にしたからね」
母がいそいそと酒肴を用意している。
「ちょっとサイズは合わないかもしれないけど、じろうくんのパジャマ着てもらうわね」
にこにことしている、母と姉。それから複雑そうな父。
じろうくんとは、姉の夫の慶次郎の事である。
(…な、なんでこんなことになるんだろ)
「あ、えっと…どうして…」
「だって、近くならともかく、途中からタクシーを使うそうじゃない?うちは狭いけど、寝るところくらいはあるんだから。こんな時間に娘を送ってきてもらって、帰せないわよ。ねぇお父さん」
確かに、飲み過ぎてしまった由梨が悪いのだ。
「あ、そうだな」
「しかも、私の結婚式にも来てくれるんでしょ?由梨」
「そ、そうだけど…」
「貴哉くんもお風呂に行ってきて、後になってごめんなさいね」
「由梨、案内しておいでよ」
「はい…」
由梨は貴哉と共にバスルームに向かう。
「あの、貴哉さん。ごめんなさい、私がしっかりしてなかったから…心配でここまで送ってくれたんですよね」
「構わないよ、大事な彼女だからね。当たり前だよ」
由梨はバスルームの説明を一通りすると、母が持ってきた
慶次郎のスウェットを渡す。
「ありがとう、お借りするよ」
「はい」
由梨が居間に戻ると
「ちょっとちょっとー!写真よりもずっと素敵じゃない。由梨」
亜弥が興奮していってくる。
「しかも、今どき珍しい誠実で礼儀正しいじゃない?ちゃんと送ってくるなんて、ねぇ」
「そうだな。由梨を大事にしてくれてると分かるな」
「そうだよ~由梨はほんとに良かったね!貴哉くんみたいないい子と付き合えて」
にこにこと亜弥と母が微笑みあっている。
ま、まだそれほど知り合って間がないのに、周りを固められつつある気がするのはなんでだろう…。
貴哉がさっぱりとして出てくると、単なるスウェットさえ格好よくおしゃれにみえるのはなんでだろう。
「あ、貴哉さん。スーツ、預かります」
「ああ、頼むね」
「シャツも洗濯しちゃえば明日には乾くわね」
と亜弥も動き出す。
「あ、ちょうどいいからじろうも呼ぼうかな」
「それもいいわね!」
由梨は貴哉の服を預かると、洗濯をしに行く。
(…私って…ダメダメじゃない?これ…)
しばらく、ウォンウォンと動く洗濯機の側で呆然としてしまう。
間もなく近くに住んでいる慶次郎がやって来て、
「こんばんわ~お邪魔します~」
と慣れたように入ってくる。
そうか…慶次郎は亜弥が高校の時からの付き合ってあるだけあって由梨の家族は貴哉の存在もなんなく受け入れたのかも知れないと思い至る。
(…泊まるって…この同じ屋根の下で…一緒に寝るんだよね…)
いつものように貴哉と相談しながら注文をしていく。
姉の事を話せて、しかも了解してもらえて由梨は貴哉に対する警戒心がほどけていった。
お酒も飲んでいたので、気がつけばぴったりと寄り添うように由梨は貴哉と隣同士だ。
(あれ?…向かいに座ってなかったかな…)
ぼんやりとそんな事を思うが、芸術的なまでに整った顔を見ていると、うっとりしてしまい冷静な判断はどこかにいってしまったかのようだ。
「由梨、そろそろ帰ろうか」
「はい~」
少し立ち上がるとふらっとするので、少しいつもより飲みすぎたかもしれない。
「由梨はお酒があんまり強くないんだね」
くすっと笑う気配がする。
「そうかも…」
手を繋いだまままた電車に乗り、警戒心も薄れ酔った由梨には貴哉が同じ方向の電車に乗ったことに意識が向かなかった。
「どっち?」
「あっちです」
由梨は帰省本能が働いたのか、貴哉に支えられるままに家にたどり着いた。
「ただいまぁ…」
「おかえりなさい…あら…」
「紺野 貴哉といいます。はじめまして」
ぼんやりと、そんなやり取りを聞いていると
「すみません、すこし飲ませ過ぎてしまって」
「あらあら、申し訳ないのはこちらです」
母がいい
「おとうさーん、あやー」
と母が父を呼んでいる。
「お父さん、亜弥ちょっと」
「あら、由梨お帰り」
「亜弥は由梨を連れていって」
由梨は亜弥につれられて、水を飲まされてそのままお風呂に入れられる。
「あとで部屋着置いておくからね!」
亜弥はぼんやりしたままの由梨をおいて、また去っていく。
お風呂で次第に酔いが覚めてくると…
(…って…何気に…連れてきちゃったじゃない!!)
由梨はあわててお風呂から出ると、家用のロングワンピースを身に付けて、居間に向かう。
そこには父と母と姉と…そして貴哉。
「あ、由梨。貴哉くん、今日は泊まってもらう事にしたからね」
母がいそいそと酒肴を用意している。
「ちょっとサイズは合わないかもしれないけど、じろうくんのパジャマ着てもらうわね」
にこにことしている、母と姉。それから複雑そうな父。
じろうくんとは、姉の夫の慶次郎の事である。
(…な、なんでこんなことになるんだろ)
「あ、えっと…どうして…」
「だって、近くならともかく、途中からタクシーを使うそうじゃない?うちは狭いけど、寝るところくらいはあるんだから。こんな時間に娘を送ってきてもらって、帰せないわよ。ねぇお父さん」
確かに、飲み過ぎてしまった由梨が悪いのだ。
「あ、そうだな」
「しかも、私の結婚式にも来てくれるんでしょ?由梨」
「そ、そうだけど…」
「貴哉くんもお風呂に行ってきて、後になってごめんなさいね」
「由梨、案内しておいでよ」
「はい…」
由梨は貴哉と共にバスルームに向かう。
「あの、貴哉さん。ごめんなさい、私がしっかりしてなかったから…心配でここまで送ってくれたんですよね」
「構わないよ、大事な彼女だからね。当たり前だよ」
由梨はバスルームの説明を一通りすると、母が持ってきた
慶次郎のスウェットを渡す。
「ありがとう、お借りするよ」
「はい」
由梨が居間に戻ると
「ちょっとちょっとー!写真よりもずっと素敵じゃない。由梨」
亜弥が興奮していってくる。
「しかも、今どき珍しい誠実で礼儀正しいじゃない?ちゃんと送ってくるなんて、ねぇ」
「そうだな。由梨を大事にしてくれてると分かるな」
「そうだよ~由梨はほんとに良かったね!貴哉くんみたいないい子と付き合えて」
にこにこと亜弥と母が微笑みあっている。
ま、まだそれほど知り合って間がないのに、周りを固められつつある気がするのはなんでだろう…。
貴哉がさっぱりとして出てくると、単なるスウェットさえ格好よくおしゃれにみえるのはなんでだろう。
「あ、貴哉さん。スーツ、預かります」
「ああ、頼むね」
「シャツも洗濯しちゃえば明日には乾くわね」
と亜弥も動き出す。
「あ、ちょうどいいからじろうも呼ぼうかな」
「それもいいわね!」
由梨は貴哉の服を預かると、洗濯をしに行く。
(…私って…ダメダメじゃない?これ…)
しばらく、ウォンウォンと動く洗濯機の側で呆然としてしまう。
間もなく近くに住んでいる慶次郎がやって来て、
「こんばんわ~お邪魔します~」
と慣れたように入ってくる。
そうか…慶次郎は亜弥が高校の時からの付き合ってあるだけあって由梨の家族は貴哉の存在もなんなく受け入れたのかも知れないと思い至る。
(…泊まるって…この同じ屋根の下で…一緒に寝るんだよね…)