まさか…結婚サギ?
すっかり花村家の居間で寛いでいる貴哉は父と慶次郎と盛り上がっている。
日本酒が飲めて父はご機嫌である。
「由梨、お布団出したから敷いてきなさい」
「どこに?」
「由梨の部屋でしょ」
当たり前だよといわんばかりの母の言葉に由梨は卒倒しそうになる。
「お母さん!私たちまだそのなんていうかえっと」
「しっかり捕まえときなさい!」
ガシッ!と肩を捕まれて、布団を示される。
「由梨!頑張りなさい」
亜弥も横で頷いている。
「あのね、どこの世界に嫁入り前の娘を男と同室にする親がいるの」
「あのね、由梨。日本は平安時代には娘に良いと思う男を夜這いさせたものよ。つまりこれは日本古来からの伝統なの」
にっこりと微笑まれて由梨はひきつった。
「お姉ちゃんは妊婦だし、お母さんは年なんだから由梨しか運べないでしょ?ほら」
と母に布団一式を示されて、由梨はため息と共に布団を2階の自分の部屋に運び込んだ。
小さな机を避けて、ベッドの横に布団を敷く。
由梨の部屋にはベッドと箪笥と机があって、貴哉の為の布団を敷くとそれで足の踏み場もない。
結局、真夜中過ぎまで酒宴は続き眠気が堪えきれなくなった所でそれぞれ部屋に向かう。
「貴哉さんは私の部屋です」
おそるおそる彼を見るが、かなり飲んでいたのに貴哉はあまり変わっていない。
「お酒、強いんですね」
「表に出ないだけでかなり酔ってるよ?由梨の部屋に泊まりなんて、緊張するな」
「ほ、ほんとにそう思ってます…?」
「思ってるよ?好きな子の部屋に泊まるのに緊張するなという方が無理じゃないかな?」
「そ、ですよね」
由梨は部屋のドアを開けて
「狭いですけど…」
由梨は先にベッドに向かい、貴哉に布団を勧める。
「残念、同じベッドじゃないんだ」
「た、貴哉さん」
「冗談だよ」
くすくすと貴哉が笑って、布団に座る。
「ご両親のいるこの家で不埒な事はしないよ」
「ですよね」
由梨はほっと息をした。
「でも…これくらいは、許されるよね?」
「え」
と思わず見ると、至近距離に貴哉の綺麗な瞳が迫っている。
後頭部に、添えられた手が貴哉と由梨の距離を縮める。
この前の、触れるだけのキスとは違い、浅く、そして深く…。唇が由梨の唇と重なり、そしてゆっくり味わうかのように舌が蹂躙して、ゆっくりと余韻を残して離れていく。
「今度…一つの部屋に寝るときは、こんなものでは済まないからね?」
由梨はキスでぼぅっとなったままその言葉を聞いて、ぼんやりと頷いた。
「おやすみ、由梨」
額にそっと口づけされて、由梨は布団をかけられる。
「おやすみなさい貴哉さん…」
布団の温もりが、眠気を誘い由梨を夢の世界へとさらっていく。
思考はすでに正常ではない。貴哉は何と言っただろうか…。
日本酒が飲めて父はご機嫌である。
「由梨、お布団出したから敷いてきなさい」
「どこに?」
「由梨の部屋でしょ」
当たり前だよといわんばかりの母の言葉に由梨は卒倒しそうになる。
「お母さん!私たちまだそのなんていうかえっと」
「しっかり捕まえときなさい!」
ガシッ!と肩を捕まれて、布団を示される。
「由梨!頑張りなさい」
亜弥も横で頷いている。
「あのね、どこの世界に嫁入り前の娘を男と同室にする親がいるの」
「あのね、由梨。日本は平安時代には娘に良いと思う男を夜這いさせたものよ。つまりこれは日本古来からの伝統なの」
にっこりと微笑まれて由梨はひきつった。
「お姉ちゃんは妊婦だし、お母さんは年なんだから由梨しか運べないでしょ?ほら」
と母に布団一式を示されて、由梨はため息と共に布団を2階の自分の部屋に運び込んだ。
小さな机を避けて、ベッドの横に布団を敷く。
由梨の部屋にはベッドと箪笥と机があって、貴哉の為の布団を敷くとそれで足の踏み場もない。
結局、真夜中過ぎまで酒宴は続き眠気が堪えきれなくなった所でそれぞれ部屋に向かう。
「貴哉さんは私の部屋です」
おそるおそる彼を見るが、かなり飲んでいたのに貴哉はあまり変わっていない。
「お酒、強いんですね」
「表に出ないだけでかなり酔ってるよ?由梨の部屋に泊まりなんて、緊張するな」
「ほ、ほんとにそう思ってます…?」
「思ってるよ?好きな子の部屋に泊まるのに緊張するなという方が無理じゃないかな?」
「そ、ですよね」
由梨は部屋のドアを開けて
「狭いですけど…」
由梨は先にベッドに向かい、貴哉に布団を勧める。
「残念、同じベッドじゃないんだ」
「た、貴哉さん」
「冗談だよ」
くすくすと貴哉が笑って、布団に座る。
「ご両親のいるこの家で不埒な事はしないよ」
「ですよね」
由梨はほっと息をした。
「でも…これくらいは、許されるよね?」
「え」
と思わず見ると、至近距離に貴哉の綺麗な瞳が迫っている。
後頭部に、添えられた手が貴哉と由梨の距離を縮める。
この前の、触れるだけのキスとは違い、浅く、そして深く…。唇が由梨の唇と重なり、そしてゆっくり味わうかのように舌が蹂躙して、ゆっくりと余韻を残して離れていく。
「今度…一つの部屋に寝るときは、こんなものでは済まないからね?」
由梨はキスでぼぅっとなったままその言葉を聞いて、ぼんやりと頷いた。
「おやすみ、由梨」
額にそっと口づけされて、由梨は布団をかけられる。
「おやすみなさい貴哉さん…」
布団の温もりが、眠気を誘い由梨を夢の世界へとさらっていく。
思考はすでに正常ではない。貴哉は何と言っただろうか…。