まさか…結婚サギ?
水族館デート
由梨の運転で水族館に向かっていると
「…やっぱり、誰かの運転でというのは俺的にはつまらないな」
貴哉の言葉に思わず由梨は飛びつく。
やはりトロくさく感じたのではないだろうか…。
「えっと…じゃあ、代わってくれますか?私、あんまり自信がなくて」
ナビがあるとはいえ、知らない道や馴染みのない所を運転するのははらはらしてしまうのだ。
「じゃあ、そこで代わろうか」
コンビニで駐車させて、店内でコーヒーとカフェオレを買ってから運転席を交代する。
思いがけず、家族に紹介とそしてなんと泊まりなんて事になったこともあり、どことなく貴哉のいる空気感というものに馴染んでくるから不思議である。
「由梨、蓋開けてくれる?」
「あ、はい」
こんな何気ないやり取りも、親しくなりつつある証のようで…。
メジャースポットでもある水族館は、休日であることもあり予想通り混みあっている。
水槽を泳ぐ魚たちを見ながら、ゆっくりと館内を巡る。
家族連れも多くて、子供たちがはしゃぐ声がとても賑やかである。
そんな子供達を見ながら
「お姉さん、来年には産まれるんだってね」
貴哉が誰かから聞いたのか、ふとそんな事を言う。
「そうなんです。姉も両親も嬉しそうで…。もちろん、私も楽しみなんです」
由梨が笑うと、
「貴哉さんは、兄弟は?」
「真面目な兄と、それと生意気な弟とそれから妹」
「え、四人兄弟なんですか!」
「驚くだろ?」
くすっと貴哉が笑う。なかなか四人というのは由梨の周りには珍しい。
「賑やかで楽しそうですね、お会いしてみたいです」
何気なくそんな事を言ってしまう。
「本当に?会ってみたい?」
「はい」
「じゃあ、そのうち会わせるよ」
と微笑む貴哉。
(あ、あれ?私…なんだかいけなかったかな?)
時おりゾクリとするのは、貴哉が素敵だからか…。
つまりは家族に会いたいと=だったわけで。少しばかり焦ってしまう。
「あ、イルカショー…」
「時間、チェックしておこうか」
いつもの優しい笑みに由梨はホッとする。
いつの間にか手を繋ぐ事にも抵抗はなく、自然である。
「あの…貴哉さんは…どうして、私が?」
どうして、実家にまで来るほどきちんと付き合ってくれるのか…。
由梨は男性にこんな風に大事にされたことがない。
乱暴にされた、とかではなくて…。
都合のいい女。
元彼だって…。都合のいいときにしか来なかったし、会うのは欲を満たしたい、そんな時だとしか思えなかった。
知り合って間もなく男女の中になり、デートといえば由梨の独り暮らしの部屋。テレビを見て、由梨の作ったご飯を食べて…そして…体を重ねる。お互いにお金がなかったというのも1つの要因だったとは思うけれど…
そんな風に過ごしていたのに、いつの間にか彼は裏切っていた。
そんな経験から、由梨は自分は誰かの一番にはなれないのじゃないか…そんな風に思っていた。
「好きになるのに、理由が必要?」
はっと、由梨は貴哉を見た。
「俺だって、一目惚れとか信じる質じゃない。だけど、何となく由梨ともっと話したい、そう思った」
「ありがとう…貴哉さん。私、なんだか…ずっともしかすると騙されてるんじゃないかって…思ってて…。優しくして後から裏切られるんじゃないかなって…」
そう言うと、貴哉はそっと髪を撫でる。
「由梨の事は、大事にしたいとそう思ってる」
その綺麗な瞳が、嘘だとは思えず、由梨は頬を染めて
「…うれしい、です」
と小さく呟いた。
出会ってからずっと、貴哉は由梨のことを大事にしてくれている。そう感じていたのは確かであるから。
「あっちの方も見に行こうか」
そう言って由梨を貴哉に引き寄せる。その温もりが心地よくて由梨は、身をそっと寄せて、腕に甘えるように手を繋ぐ。
恥ずかしくて、顔を見上げることは出来なかった。
水族館を堪能して、帰りも貴哉の運転で帰宅する。
両親は、貴哉と慶次郎を含めた夕食に奮発してすき焼きを準備していた。いつもの感覚からすれば恐ろしいほどの肉の量であった。
そしてこの時から、花村家には貴哉の着替えが存在することになったのである。
「…やっぱり、誰かの運転でというのは俺的にはつまらないな」
貴哉の言葉に思わず由梨は飛びつく。
やはりトロくさく感じたのではないだろうか…。
「えっと…じゃあ、代わってくれますか?私、あんまり自信がなくて」
ナビがあるとはいえ、知らない道や馴染みのない所を運転するのははらはらしてしまうのだ。
「じゃあ、そこで代わろうか」
コンビニで駐車させて、店内でコーヒーとカフェオレを買ってから運転席を交代する。
思いがけず、家族に紹介とそしてなんと泊まりなんて事になったこともあり、どことなく貴哉のいる空気感というものに馴染んでくるから不思議である。
「由梨、蓋開けてくれる?」
「あ、はい」
こんな何気ないやり取りも、親しくなりつつある証のようで…。
メジャースポットでもある水族館は、休日であることもあり予想通り混みあっている。
水槽を泳ぐ魚たちを見ながら、ゆっくりと館内を巡る。
家族連れも多くて、子供たちがはしゃぐ声がとても賑やかである。
そんな子供達を見ながら
「お姉さん、来年には産まれるんだってね」
貴哉が誰かから聞いたのか、ふとそんな事を言う。
「そうなんです。姉も両親も嬉しそうで…。もちろん、私も楽しみなんです」
由梨が笑うと、
「貴哉さんは、兄弟は?」
「真面目な兄と、それと生意気な弟とそれから妹」
「え、四人兄弟なんですか!」
「驚くだろ?」
くすっと貴哉が笑う。なかなか四人というのは由梨の周りには珍しい。
「賑やかで楽しそうですね、お会いしてみたいです」
何気なくそんな事を言ってしまう。
「本当に?会ってみたい?」
「はい」
「じゃあ、そのうち会わせるよ」
と微笑む貴哉。
(あ、あれ?私…なんだかいけなかったかな?)
時おりゾクリとするのは、貴哉が素敵だからか…。
つまりは家族に会いたいと=だったわけで。少しばかり焦ってしまう。
「あ、イルカショー…」
「時間、チェックしておこうか」
いつもの優しい笑みに由梨はホッとする。
いつの間にか手を繋ぐ事にも抵抗はなく、自然である。
「あの…貴哉さんは…どうして、私が?」
どうして、実家にまで来るほどきちんと付き合ってくれるのか…。
由梨は男性にこんな風に大事にされたことがない。
乱暴にされた、とかではなくて…。
都合のいい女。
元彼だって…。都合のいいときにしか来なかったし、会うのは欲を満たしたい、そんな時だとしか思えなかった。
知り合って間もなく男女の中になり、デートといえば由梨の独り暮らしの部屋。テレビを見て、由梨の作ったご飯を食べて…そして…体を重ねる。お互いにお金がなかったというのも1つの要因だったとは思うけれど…
そんな風に過ごしていたのに、いつの間にか彼は裏切っていた。
そんな経験から、由梨は自分は誰かの一番にはなれないのじゃないか…そんな風に思っていた。
「好きになるのに、理由が必要?」
はっと、由梨は貴哉を見た。
「俺だって、一目惚れとか信じる質じゃない。だけど、何となく由梨ともっと話したい、そう思った」
「ありがとう…貴哉さん。私、なんだか…ずっともしかすると騙されてるんじゃないかって…思ってて…。優しくして後から裏切られるんじゃないかなって…」
そう言うと、貴哉はそっと髪を撫でる。
「由梨の事は、大事にしたいとそう思ってる」
その綺麗な瞳が、嘘だとは思えず、由梨は頬を染めて
「…うれしい、です」
と小さく呟いた。
出会ってからずっと、貴哉は由梨のことを大事にしてくれている。そう感じていたのは確かであるから。
「あっちの方も見に行こうか」
そう言って由梨を貴哉に引き寄せる。その温もりが心地よくて由梨は、身をそっと寄せて、腕に甘えるように手を繋ぐ。
恥ずかしくて、顔を見上げることは出来なかった。
水族館を堪能して、帰りも貴哉の運転で帰宅する。
両親は、貴哉と慶次郎を含めた夕食に奮発してすき焼きを準備していた。いつもの感覚からすれば恐ろしいほどの肉の量であった。
そしてこの時から、花村家には貴哉の着替えが存在することになったのである。