まさか…結婚サギ?

再会

大学では貴哉以外にも目立つ存在の男たちもいたが、貴哉を女たちは狙うように寄ってきその事を苦痛に感じていた。

そして、兄に言われた処世術はとりあえず大学で目立つ女の子が寄ってきたらその子と付き合う、だった。

試しに、好きでもなんでもないが付き合うと、なるほど、その女の子とは付き合わないといけないが他は、距離を置いてくれるのだ。

しかし、やはり気持ちがない貴哉に彼女らは例外なく
「冷たい」
の言葉を残して離れていった。

そうして冷めた態度でしか付き合わないなると、次第に近寄りがたい雰囲気になってきたのか、つきまとう女の子たちも減って行き、貴哉は満足していた。

そして、大学3年の大学のキャンパスだった。

大学を歩く制服の行列を見かけたのだ。
貴哉の近くにいた学生が
「あれ?短大生?」
「ああ、今日は短大生と合同実習だって。医学部が張り切ってた」
「医学部?」
「短大の看護科だってさ」

その短大生の制服の中に貴哉は由梨を見つけた。
引率の教師に連れられて列になって足早に歩くその中で、なぜか由梨は鮮明に貴哉の目に飛び込んできた。

笑顔で友人と話ながら歩くその姿に貴哉は自分自身で驚いた。何故由梨の事をまだ覚えているのか…どうして…その同じような女の子たちの中から見つけられたのか…。

由梨は確かに可愛いと思ったが、貴哉の周りには才色兼備といった言葉が似合うような女の子がいたし、実際に付き合うということもしていた。その彼女たちより由梨が優れているわけでもないのに…。

するりと貴哉を素通りしていく由梨は、貴哉の事を覚えてなどいなさそうだった。

もう、2年前に数日間ほんの僅か、言葉を交わしただけだ。覚えていなくても仕方ない。覚えている方がむしろ不思議なのかも知れない。

その日の大学の食堂で、貴哉は‘’たまたま‘’医学部の学生の近くに座った。
「今日の短大生たちと合コンの約束した」
「まじか!けっこう、可愛い子いたよな?」
「約束した子も、可愛かった」
「あっちは女子短だから、ほんとにフリーかな?」
「どうだろ?」
「実習に行くから、髪とかみんな黒かったし真面目そうには見えたけどなぁ」

合コン…。
その中に由梨も入るのかと思うと、貴哉は胸がざわついた。

「紺野?どうした?」
「…いや…」

向かいに座る、友人の榎原 陸人が不思議そうに貴哉を見ている。

「なんか、おかしいぞ?」
「ああ…」

貴哉は合コンを知らない。興味がないからだ。

(何で、こんなに気になるんだ…)

貴哉のざわついた気持ちはなかなか収まらなかった。

そして何となく、ネットで‘’合コン‘’を検索してしまい、その実態にさらに動悸がする。

(…調べてどうするんだ…向こうは、俺の事を覚えてもいないのに…)
そう考えて思わず疑問になる。
たった数日、わずか何分かしか会っていないのに、どうかしてる…。
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