まさか…結婚サギ?
そして…。
社会人、2年目の秋。
ここまで来ると、一体どういう事だと貴哉は居酒屋の隣の席をちらりと見た。
そこには、由梨とそして男と、そしてもう一人の女。
会話は聞こえなくても、貴哉にはその修羅場っぽい雰囲気はわかった。
「それで…。要するに、私と別れてその人と結婚するからってことを言うためにわざわざここの席に呼んだの?」
由梨の柔らかな声は、今は硬い口調である。
「…ごめんな、由梨」
「話はそれだけなの?」
「ごめんね、由梨ちゃん。でもね、由梨ちゃんが忙しすぎて渉とてもさみしそうだったの」
「そうですか、白石さん。じゃあ鍵を返してくれます?」
「由梨、俺は…」
「返してくれますか?すぐに」
由梨は渉と呼ばれた男から鍵を受けとると、
「じゃぁ、お幸せに。どうぞ」
と言うと、席を立って出て行った。
「…渉~、由梨ちゃんあっさりしてて良かったねぇ」
「あ…そう…だな」
「あずが、渉に優しくしてあげるから、ね?」
「…。」
(…男の方は、まだ未練があるのか?自分が浮気したのに)
と思いつつ、貴哉は自分の席に座っている来宮 初夏を見た。隣の席が、修羅場ならば…。
貴哉もそれに近い事態になっていた。とも言える。
ずっとメソメソと、泣いていて貴哉は彼女の話をうんざりとさっきから聞き流していた。
(時間の無駄だな…まったく)
「なぁ、初夏。要は、別れ話だろ?なんでお前が浮気して、それが俺のせいで、うらみ事を言われないといけないのかさっぱりわからない。その新しい男と付き合えばいいだろ?」
「だから!貴哉は冷たいっていうの。いつも、仕事ばっかり。私とどっちが大切なの?だから、だから…寂しくって、つい他の人にフラフラしちゃったのよ」
「はぁ?好きにフラフラしてろ。その代わり、もうスッパリ関係を切ってくれれば俺はそれでいい。これ以上は時間の無駄」
貴哉はそう言うと席を立った。
付き合うときは、もう少し賢明で大人の付き合いが出来ると思っていた。
自分が冷たいことも、恋愛体質じゃないことも分かってるが、向こうもそれを承知ではなかったのかと思う。
いい加減、こういう付き合いも面倒だな…。と貴哉は思う
学生と違い、社会人になると仕事以外の時間は貴重である。こんなうんざりとさせられるのはごめんだ。
店の外に出てしばらく歩いていくと、ショーウィンドゥをぼんやりと見ている由梨に、気がついた。
その瞳には何も写していないような、まるで途方に暮れた迷子のようで、貴哉は少しその姿を離れたところからしばらく見つめてしまった。
そんな由梨に、ナンパ目的の二人組が近づいていく。
声をかけられて、由梨は手を振って拒否をしめすと駆け足で立ち去って行った。
小さくなっていくその頼りなげなその姿が、目に焼き付く。
…まったく…何年も…どうして覚えてるのか。どうかしてる。
社会人、2年目の秋。
ここまで来ると、一体どういう事だと貴哉は居酒屋の隣の席をちらりと見た。
そこには、由梨とそして男と、そしてもう一人の女。
会話は聞こえなくても、貴哉にはその修羅場っぽい雰囲気はわかった。
「それで…。要するに、私と別れてその人と結婚するからってことを言うためにわざわざここの席に呼んだの?」
由梨の柔らかな声は、今は硬い口調である。
「…ごめんな、由梨」
「話はそれだけなの?」
「ごめんね、由梨ちゃん。でもね、由梨ちゃんが忙しすぎて渉とてもさみしそうだったの」
「そうですか、白石さん。じゃあ鍵を返してくれます?」
「由梨、俺は…」
「返してくれますか?すぐに」
由梨は渉と呼ばれた男から鍵を受けとると、
「じゃぁ、お幸せに。どうぞ」
と言うと、席を立って出て行った。
「…渉~、由梨ちゃんあっさりしてて良かったねぇ」
「あ…そう…だな」
「あずが、渉に優しくしてあげるから、ね?」
「…。」
(…男の方は、まだ未練があるのか?自分が浮気したのに)
と思いつつ、貴哉は自分の席に座っている来宮 初夏を見た。隣の席が、修羅場ならば…。
貴哉もそれに近い事態になっていた。とも言える。
ずっとメソメソと、泣いていて貴哉は彼女の話をうんざりとさっきから聞き流していた。
(時間の無駄だな…まったく)
「なぁ、初夏。要は、別れ話だろ?なんでお前が浮気して、それが俺のせいで、うらみ事を言われないといけないのかさっぱりわからない。その新しい男と付き合えばいいだろ?」
「だから!貴哉は冷たいっていうの。いつも、仕事ばっかり。私とどっちが大切なの?だから、だから…寂しくって、つい他の人にフラフラしちゃったのよ」
「はぁ?好きにフラフラしてろ。その代わり、もうスッパリ関係を切ってくれれば俺はそれでいい。これ以上は時間の無駄」
貴哉はそう言うと席を立った。
付き合うときは、もう少し賢明で大人の付き合いが出来ると思っていた。
自分が冷たいことも、恋愛体質じゃないことも分かってるが、向こうもそれを承知ではなかったのかと思う。
いい加減、こういう付き合いも面倒だな…。と貴哉は思う
学生と違い、社会人になると仕事以外の時間は貴重である。こんなうんざりとさせられるのはごめんだ。
店の外に出てしばらく歩いていくと、ショーウィンドゥをぼんやりと見ている由梨に、気がついた。
その瞳には何も写していないような、まるで途方に暮れた迷子のようで、貴哉は少しその姿を離れたところからしばらく見つめてしまった。
そんな由梨に、ナンパ目的の二人組が近づいていく。
声をかけられて、由梨は手を振って拒否をしめすと駆け足で立ち去って行った。
小さくなっていくその頼りなげなその姿が、目に焼き付く。
…まったく…何年も…どうして覚えてるのか。どうかしてる。