まさか…結婚サギ?
賽は投げられた
貴哉は入社して4年目を迎えていた。
新人、という枠を脱してくると接待相手もそろそろ付き合いが長くなってきて、自然と砕けた会話も出てくる。
「紺野くんは、モテるだろう?」
取引先の年上の相手は、そう話しかけてくる。
「自慢じゃありませんが、モテてましたね。多分」
「だろうなぁ…。君は結婚しない主義かな?」
「まだ考えてませんね」
「だったらどうかな?うちの姪は」
(…出たな…仕事が絡むと、邪険に断りにくい…)
「申し訳ないのですが、すぐではありませんが将来を約束した人がいるので」
口から出任せという、ありもしないことを言うと
「なんだぁ、そうか。じゃあ仕方ないなぁ」
とあっさり引き下がる。
これもいつまでも突き通せる訳でもない。
近頃、貴哉にはこんな話が降ってくる。要はお年頃だというわけだ。
仕事が絡むと女性そのものが寄ってくるよりも厄介な事だと貴哉はひしひしと感じていた。
いっそのこと、椿と本当に偽装結婚でもするか?ふとそんな考えが浮かぶ。
佐塚 椿は、佐塚建設の令嬢で貴哉たち兄弟とは幼馴染みに近い間柄である。椿は、モデルのような外見に反してかなり貴哉と似たり寄ったりの性格で、年頃になった頃から『私は貴哉と結婚するの』と豪語していた。その理由を貴哉はほぼ正確に見抜いていた。
つまり、椿は誰とも結婚したくないのだ。しかし、令嬢である椿は誰も相手がいないとなると見合いやらなんやらと話が舞い込んでくる。もろもろの条件から貴哉の名前をあげたのだろう。
佐塚家としては椿がそう望むなら、とこれまで様子をみていたし、貴哉もまた勝手な事を言っているなと放置していた。
しかし、偽装と言えど椿と夫婦などゾッとする。
ふりで指輪をつけておくか?そうすれば、仕事的には面倒が押さえられるのか?
勤務先ではそれは通じず、いつかまた同じ問題が持ち上がりそうだ。
(…結婚か…)
会社の寮はあと、2年で出なければならずそれに合わせるなら、そろそろ真剣に付き合う相手を見つけなければならない。
貴哉は、同じ部署の珠稀と、それから優菜を見た。唯一、普通に会話をしている女性二人である。
珠稀は、上司と不倫しているから却下だし、優菜は仕事をするには良いが、どうだろう…。
(…ないな…)
優菜には仕事仲間としてしか見れなさそうだ。
(…これまで付き合う相手に不自由をしたことはなかったが…いざ、真剣にとなると難しいものだ…)
加えて、この性格だ。
本性を知れば大概の女たちは離れていくだろう。 これまでの経緯を思い出せば確率は100%に近い。
なかなか前途多難だな
貴哉は自嘲ぎみに笑った。
「わ、なに?その黒い笑み。怖いって」
優菜が顔をしかめて言ってくる。
「顔と頭は良いんだから、笑い方くらい研究したら?」
「それ以外は取り柄がないみたいだな」
「自分でも、その黒い性格わかってくるせに。だから、怖いって」
そう貴哉にもはっきり言える優菜である。貴重な同期といっても過言ではない。
新人、という枠を脱してくると接待相手もそろそろ付き合いが長くなってきて、自然と砕けた会話も出てくる。
「紺野くんは、モテるだろう?」
取引先の年上の相手は、そう話しかけてくる。
「自慢じゃありませんが、モテてましたね。多分」
「だろうなぁ…。君は結婚しない主義かな?」
「まだ考えてませんね」
「だったらどうかな?うちの姪は」
(…出たな…仕事が絡むと、邪険に断りにくい…)
「申し訳ないのですが、すぐではありませんが将来を約束した人がいるので」
口から出任せという、ありもしないことを言うと
「なんだぁ、そうか。じゃあ仕方ないなぁ」
とあっさり引き下がる。
これもいつまでも突き通せる訳でもない。
近頃、貴哉にはこんな話が降ってくる。要はお年頃だというわけだ。
仕事が絡むと女性そのものが寄ってくるよりも厄介な事だと貴哉はひしひしと感じていた。
いっそのこと、椿と本当に偽装結婚でもするか?ふとそんな考えが浮かぶ。
佐塚 椿は、佐塚建設の令嬢で貴哉たち兄弟とは幼馴染みに近い間柄である。椿は、モデルのような外見に反してかなり貴哉と似たり寄ったりの性格で、年頃になった頃から『私は貴哉と結婚するの』と豪語していた。その理由を貴哉はほぼ正確に見抜いていた。
つまり、椿は誰とも結婚したくないのだ。しかし、令嬢である椿は誰も相手がいないとなると見合いやらなんやらと話が舞い込んでくる。もろもろの条件から貴哉の名前をあげたのだろう。
佐塚家としては椿がそう望むなら、とこれまで様子をみていたし、貴哉もまた勝手な事を言っているなと放置していた。
しかし、偽装と言えど椿と夫婦などゾッとする。
ふりで指輪をつけておくか?そうすれば、仕事的には面倒が押さえられるのか?
勤務先ではそれは通じず、いつかまた同じ問題が持ち上がりそうだ。
(…結婚か…)
会社の寮はあと、2年で出なければならずそれに合わせるなら、そろそろ真剣に付き合う相手を見つけなければならない。
貴哉は、同じ部署の珠稀と、それから優菜を見た。唯一、普通に会話をしている女性二人である。
珠稀は、上司と不倫しているから却下だし、優菜は仕事をするには良いが、どうだろう…。
(…ないな…)
優菜には仕事仲間としてしか見れなさそうだ。
(…これまで付き合う相手に不自由をしたことはなかったが…いざ、真剣にとなると難しいものだ…)
加えて、この性格だ。
本性を知れば大概の女たちは離れていくだろう。 これまでの経緯を思い出せば確率は100%に近い。
なかなか前途多難だな
貴哉は自嘲ぎみに笑った。
「わ、なに?その黒い笑み。怖いって」
優菜が顔をしかめて言ってくる。
「顔と頭は良いんだから、笑い方くらい研究したら?」
「それ以外は取り柄がないみたいだな」
「自分でも、その黒い性格わかってくるせに。だから、怖いって」
そう貴哉にもはっきり言える優菜である。貴重な同期といっても過言ではない。