まさか…結婚サギ?

ざわめく心

白石 渉は、由梨が18歳で桐王大学附属 白菊女子短期大学の学生の頃に知り合った。

由梨たち看護学生は、解剖実習と言うものがありそれは医学部の学生たちと合同で行われ、桐王大学の医学部に行くことになっていた。
その時はそれで終わったのだが、由梨の友人である和花たちは、彼らと合コンの約束を取り付けていたのだ。

合コンははじめてだったから由梨は、どうすればいいかわからず、盛り上がる周囲を見ながらちびちびとジュースを飲んでいた。
「おとなしいんだね、由梨ちゃん」
いきなり、名前で呼ばれて由梨はどきりとした。

渉は、今時の服装と、ヘアスタイルでとてもチャラチャラして見えてより緊張させられた。
「ごめん、友達が由梨って呼んでたから」
「あ、そうでしたね」
「俺は白石 渉。渉でいいから」
「渉、さん」
「うん?男なれしてないんだ、渉って呼び捨てにしてみて」
「…わ、たる」
「そうそう」

渉はそういうと、由梨にあれ食べる?とか聞いてきて、構ってくれたのだ。

お酒も入り盛り上がってるそんな中。亜弥からのメールをチェックして、返信すると
「これ、由梨ちゃんの携帯?」
「あ、はい」
「ふーん、やっぱり女の子らしいケース。由梨ちゃんぽいね」
「そうですか?」

渉はそのスマホを手に取ると、由梨があっと躊躇っているうちに、アドレスの交換をしてしまった。

「今度さ、二人で会おうよ。由梨ちゃん、可愛いしさ、俺また会いたいんだ」
「その…」
「いや、だった?」
優しく微笑みかけられて、由梨は首を横に振る。

戸惑ってはいるけれど、嫌ではない。
渉からのメールが来たのは、その日の夜だった。

『土曜日、会おうよ』

由梨はどう返事をしたものか、和花に相談した。
「どうしよう?和花」
「今は彼氏いないんでしょ?だったらさ、気軽に会ってみたら?もう18だし、一回も彼氏がいないのも卒業してみたら?」
和花の言うように、由梨はまだ付き合った事がなかった。
「チャラそうかもしれないけど、嫌になったら別れたらいいんだし」

そう言われて、由梨は恐る恐るメールに返信をした。
それから、由梨は渉との付き合いが始まることになるのだが…。

渉は医学部だけあり、忙しいのか会うのはいつも、彼の時間の空いている時に突然だった。
外であったのは、はじめてのデートと、その次のデート。
その後は、渉の家か由梨が寮に入ったら由梨の部屋になっていった。
そんな、付き合いがゆるゆると3年続いた。
渉は、由梨とあった数日後に由梨を居酒屋に呼び出した。

ひさしぶりの外での待ち合わせに何となくうきうきとして、なのに…そこに女の子が渉の隣にいるのを見つけた。

(浮かれて、バカみたい)

由梨はそこで、何のために呼ばれたのか覚った。

わざわざ呼び出して、バカにしてる。
(4年も…付き合ってたのに…)

「あのさ…」
言い出した渉の声を遮って
「私、妊娠してるの」
隣の女の子がそう言った。少しばかり露出度の高い、色っぽく見える彼女。

だけど、どうしてだろう…何も、感じなかった。

会うのはいつも、渉の都合。
それも、最近は月に数回になっていた。会えば、会話もそこそこに体を重ねてそれで終わり。でも、由梨も忙しくて渉の事は後回しで…その事に不満を抱かなかった。
(とっくに…この人とは終わってたのかな…)
ぼんやりと二人を見ていた。
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