まさか…結婚サギ?

観劇と。親友と。思い出。

一晩、貴哉に散々啼かされた由梨は翌朝ふらつきながらも、またまた借りた上質なワンピースにヒールを合わせた、可愛らしいお嬢様のようなスタイルだ。

「おはよう、由梨さん。朝食は和食で大丈夫だったかしら?」
「おはようございます、和食で大丈夫です」

由梨はまた貴哉に示された席に座ると、
「あの、麻里絵さん…、お借りしたお洋服はどうすればいいですか?」
「部屋に置いておいてもらってればいいわよ。似合ってたから、良かったらもってかえってほしいくらい」

朝食のあと、由梨は貴哉と麻里絵と絢斗と揃って絢斗の運転する高級外車で劇場に向かった。

「貴兄さ、なんでわざわざ中古の国産車買ったの?」
「なんで?」
「いや、だってさ。うちに車あるのに」
「絢斗、普通の若い会社員はこんな車に乗ってたらおかしい。俺は営業だぞ?こんな車で仕事になるか」
「へぇ~そういうことなのかぁ」
「絢斗、お前本当に普通の会社に入るのか?」
「入るよ」
「絢ちゃんは貴くんみたいに、立派に一人立ち出来るかしら」
麻里絵は心配だと、いう雰囲気で言った。
「ひでぇ…」

麻里絵はクスクス笑って絢斗を見た。

「そうやって、connoを蹴って入ったんだから、こっちが駄目だったから、やっぱり入れてって言うのは止めなさいね?」
「…マジ?」
「マジよマジ」
「貴兄には、洸兄が入れ入れ言ってるのに」
「貴くんは、今の所でもしっかりといい成績してるから。駄目で逃げる訳じゃなくて、本当に洸くんは貴くんに来てほしいの」
「だから、絢斗は最初からconnoに入っておけば良かったんだよ」
「貴兄に出来て俺に出来ないわけがない。俺の方がちゃんと人付き合いが出来るからな」
「なんだって?」
「貴兄みたいに不器用じゃないんだからな」

(不器用?)

「不器用…ですか?」
「由梨さんはさぁ、貴兄の事、器用だと思うわけ?」
「…器用、不器用…というか…。でも、凄くまっすぐだと思います」
「…えっ…!?」

絢斗が大きな声で驚いた。

「由梨ちゃんから見たらそうなるんだ…?」

「由梨…。もう、絢斗とは話すな」
貴哉はクールに言い放つ。

車を、劇場近くに停めるとまずは当日券を買いに向かう。
「あの列に並ぶのね」
うきうきと麻里絵は絢斗の腕を引いて並ぶ。

「由梨?」
並びに行く麻里絵を見送っていると、後ろから声がかかった。
「…のん?」
振り向くとそこには和花がいた。
「やだ、今日は誘ってなかったのに、偶然!…ってもしかして、デートだった?」
「こんにちは」
隣にいた貴哉が和花に挨拶をする。
「あ、由梨の友人の清川 和花です。あ、並んでくる!」
和花は麻里絵の後ろに並ぶ
「和花は私と高校の時からの友人なんですよ。いつも観劇するのも和花と行くんですよ」

やがて、無事にチケットを購入した麻里絵たちと、それから和花が寄ってくる。
「由梨、じゃあまた一緒にみよ」
「うん」

「由梨、清川さんも一緒に食事をしたらどうかな」
「いいですか?」

貴哉は頷いている。
「ありがとう貴哉さん」
由梨は、

「のん~」
と呼びながら追いかけた。
「ん?どうしたの」
「お昼、一緒に食べないかって」
「えー邪魔じゃない?」
「大丈夫」

「すいませーん、お邪魔します」

元気よく言う和花だけど、何となく顔が疲れている。
「のん、もしかして明け?」
「うん。だから妙にテンション高いでしょ?あ、ユ◯ケル飲まなきゃ」

「お疲れ様だねぇ~」
「そのかわり!正月手当てももらえるし、明日も夜勤だけど、3日からは休みだし。だから、こうして思い付きで来ちゃった」
てへっと和花が笑っている。

「のんらしいね」
「でしょ?これが私の発散方法だから」

「で、ねぇ、由梨はいつの間に彼が出来てその彼の家族ぐるみで仲良くなったの?」
「えっと、本当に最近…」
「ふぅ~ん」





< 42 / 82 >

この作品をシェア

pagetop