まさか…結婚サギ?
麻里絵の案内でイタリアンレストランに行くと、
和花は食事を朝からまだ食べていなかったらしく、たくさん注文していた。
和花は背が高く目力のある美人で、だからなかなか目立つ。
「のんちゃんめっちゃよく食べるね。俺、女の子がたくさん食べるの好きだなぁ」
「夜中仕事してたから、とーってもお腹が空いてるの」
「そっか、大変だね」
「ほんっとに、大変なの」
和花は思いっきり力を込めて言った。
「和花はオペ室と救急外来なんですよ。」
「由梨には無理な所だよね~」
「その通り、です」
由梨はしょぼんとうなだれる。
「そのかわり、私は病棟無理だしね」
和花は明るく言った。
「えっと、それで彼は名前聞いたっけ?」
「紺野です」
「紺野くんね。下は?」
「紺野 貴哉」
「で、俺は弟の絢斗」
「で、お二人のお母さまね」
「和花さんよろしくね」
にこにこと麻里絵は和花を見る。
「あ、そうだ。のん、あのね…これ渡そうと思ってたの」
由梨は星乃りんのサイン入りの写真を渡した。
「え、由梨。これどうしたの?」
「貴哉さんの妹、なの」
「ええーそうなの~!!やば、めっちゃ嬉しい」
和花はそれを綺麗にバッグに納めると
「え、て事は直接もらったんだよね?由梨、いいな」
食事をはじめて、和花はすっきりとした声をあげた。
「あ、そうだ。思い出した~。貴哉くん、桐王大学附属病院に入院してませんでしたか?」
和花がいきなりそう言った。
「…してましたよ」
「やっぱり、そうだ。由梨、ほらはじめての実習の時だよ」
「?」
「やだ、由梨ってば。こんなイケメンなかなかいないよ」
(実習…?)
「由梨さ~2日目からめっちゃテツコに怒られたでしょ?」
鉄の女のように怖いということで、そう呼ばれている先生がいたのだ。
「あ!」
由梨は思い出した。確かに…会っている。その時の患者さんと、貴哉がようやく結び付いた。
その瞬間顔を染めて手で覆った。
「やだ!あの、私の黒歴史…」
「由梨はあの時大変だったもんねぇ」
和花が楽しそうに笑った。
「面会の人にはイヤらしい目でみられるし、待ち伏せはされるし」
「のん、もうダメだってば」
由梨はゾッとして腕を抱き締めた。
その当時は実習の緊張と慣れない生活のストレス。それからその自分が、そういう目で見られるという戸惑いと恐れ。
「え、と貴哉さん、私の事覚えてましたか?」
「そんな何年も前の事、忘れてた」
淡々という貴哉に、由梨は慌てる。
「あ、そう、ですよね。たった数日だったんですから」
「それはそうだろう。覚えてる訳がない。で待ち伏せとか、なに?」
「由梨は可愛らしいでしよ?その時の学生の制服って、今は絶滅してるナースキャップにピンクのナース服で、まぁ…ちょっと…コスプレっぽかったせいか…。待ち伏せとかされたりね。しかも、帰りも高校の制服だし。もちろん、私が撃退したけど!黒歴史になってても仕方ないか…」
「のん…喋りすぎなんだから」
「貴哉くんにも、由梨泣かされてたよね?あれから由梨の泣き虫レッテルついちゃったから…。看護師さんとかも、由梨には厳しくってね、『すぐ泣く!』とか怒られるしね」
「やだもう。本当にその時の話は終わりにして」
「由梨の黒歴史だねぇ~?」
「のんったら、私の話はいいから」
「はいはい。でも、由梨ビックリするわ、私でも覚えてたのに」
「まさか、そんな偶然があるなんて思いもしなくって」
「それも、そうか」
和花は笑った。
「そういえば一葉(かずは)くん、就職は決まった?」
「うん。決まったって、だからもう和花は、自分の事だけ気にしろだって」
「二人とも、頑張ったねぇ」
「でしょ?」
ふふっと和花が笑う。
和花は食事を朝からまだ食べていなかったらしく、たくさん注文していた。
和花は背が高く目力のある美人で、だからなかなか目立つ。
「のんちゃんめっちゃよく食べるね。俺、女の子がたくさん食べるの好きだなぁ」
「夜中仕事してたから、とーってもお腹が空いてるの」
「そっか、大変だね」
「ほんっとに、大変なの」
和花は思いっきり力を込めて言った。
「和花はオペ室と救急外来なんですよ。」
「由梨には無理な所だよね~」
「その通り、です」
由梨はしょぼんとうなだれる。
「そのかわり、私は病棟無理だしね」
和花は明るく言った。
「えっと、それで彼は名前聞いたっけ?」
「紺野です」
「紺野くんね。下は?」
「紺野 貴哉」
「で、俺は弟の絢斗」
「で、お二人のお母さまね」
「和花さんよろしくね」
にこにこと麻里絵は和花を見る。
「あ、そうだ。のん、あのね…これ渡そうと思ってたの」
由梨は星乃りんのサイン入りの写真を渡した。
「え、由梨。これどうしたの?」
「貴哉さんの妹、なの」
「ええーそうなの~!!やば、めっちゃ嬉しい」
和花はそれを綺麗にバッグに納めると
「え、て事は直接もらったんだよね?由梨、いいな」
食事をはじめて、和花はすっきりとした声をあげた。
「あ、そうだ。思い出した~。貴哉くん、桐王大学附属病院に入院してませんでしたか?」
和花がいきなりそう言った。
「…してましたよ」
「やっぱり、そうだ。由梨、ほらはじめての実習の時だよ」
「?」
「やだ、由梨ってば。こんなイケメンなかなかいないよ」
(実習…?)
「由梨さ~2日目からめっちゃテツコに怒られたでしょ?」
鉄の女のように怖いということで、そう呼ばれている先生がいたのだ。
「あ!」
由梨は思い出した。確かに…会っている。その時の患者さんと、貴哉がようやく結び付いた。
その瞬間顔を染めて手で覆った。
「やだ!あの、私の黒歴史…」
「由梨はあの時大変だったもんねぇ」
和花が楽しそうに笑った。
「面会の人にはイヤらしい目でみられるし、待ち伏せはされるし」
「のん、もうダメだってば」
由梨はゾッとして腕を抱き締めた。
その当時は実習の緊張と慣れない生活のストレス。それからその自分が、そういう目で見られるという戸惑いと恐れ。
「え、と貴哉さん、私の事覚えてましたか?」
「そんな何年も前の事、忘れてた」
淡々という貴哉に、由梨は慌てる。
「あ、そう、ですよね。たった数日だったんですから」
「それはそうだろう。覚えてる訳がない。で待ち伏せとか、なに?」
「由梨は可愛らしいでしよ?その時の学生の制服って、今は絶滅してるナースキャップにピンクのナース服で、まぁ…ちょっと…コスプレっぽかったせいか…。待ち伏せとかされたりね。しかも、帰りも高校の制服だし。もちろん、私が撃退したけど!黒歴史になってても仕方ないか…」
「のん…喋りすぎなんだから」
「貴哉くんにも、由梨泣かされてたよね?あれから由梨の泣き虫レッテルついちゃったから…。看護師さんとかも、由梨には厳しくってね、『すぐ泣く!』とか怒られるしね」
「やだもう。本当にその時の話は終わりにして」
「由梨の黒歴史だねぇ~?」
「のんったら、私の話はいいから」
「はいはい。でも、由梨ビックリするわ、私でも覚えてたのに」
「まさか、そんな偶然があるなんて思いもしなくって」
「それも、そうか」
和花は笑った。
「そういえば一葉(かずは)くん、就職は決まった?」
「うん。決まったって、だからもう和花は、自分の事だけ気にしろだって」
「二人とも、頑張ったねぇ」
「でしょ?」
ふふっと和花が笑う。