まさか…結婚サギ?

向けられた敵意

「花村さん、何だか個人宛の手紙が来てるんでお渡ししますね」
「え?なぜここに?」
「さぁ…。差出人がないんで、ダイレクトメールですかね」

クリニックになぜ?と思いながら受け取った封筒を見ると、ソノダクリニック 花村 由梨と宛名シールが貼ってあり確かにダイレクトメールの様にみえた。

スタッフルームに行き、とりあえず開けてみると、中からは写真が出てきた。
「え…」

そこには、一昨日から昨日の物と思わしき貴哉と由梨の二人の写真と、それから貴哉と美女が顔を寄せあってカフェにいる写真が入っていた。

「なにこれ…」


震える指でその一枚一枚を見た。
全て隠し撮りのようなそれは本当に近くから撮られているかのよう。
「なに…これ…」

「どうしたの?花村さん」
「水川さん…」
「やだ、嫌がらせ?」

絶句している由梨を見て
「顔色悪いよ…大丈夫?」
「平気…」
全く平気ではなかったけれど、そう条件反射的に答えていた。
由梨はその手紙を捨てるのも怖くなり、カバンにしまう。

昼に、貴哉から電話がかかってきたときに由梨は
「…貴哉さんは、変わったことはありませんでしたか?」
彼と二人で写っていた事と、貴哉と美女が写っていたから気になったのだ。
「…変わったこと?」
「手紙がきたとか」
「いや、ないよ。どうかしたの?」
「いえ、何でもないんです」

(じゃあこれは…私へのいやがらせなんだ)

誰かわからないけど、由梨は悪意を向けられている。

そして、その写真は毎日クリニックのポストに入っていて

「また来てたよ。警察に相談に行ったら?」
「はい…」

受付事務の中森 月乃に心配そうに言われる。

由梨は午前診の終わったあとに、警察に相談に行くことにした。

「うーん。この写真だけなんだよね?しかも撮られてるのも外ばっかりだし、脅迫とかもされてないよね?心配なら一応防犯ブザーは貸し出せるよ」
「…いいです。持ってますから」

これくらいで言われても、何も出来ないという雰囲気で由梨はすごすごと引き下がった。

隠し撮りはほとんど毎日続いていて、そして翌朝にはそれが届けられる。

(気持ち悪いし…怖い…)

特に、仕事の帰りに貴哉と会った日にはとてつもない枚数が届いて由梨を脅すかのようだ。
そして、美女と貴哉の並んで歩く写真が届けられる。

(なんなの…)

写真の事は貴哉に告げられずにいた。美女の事も聞けず由梨は貴哉と会うのが少し怖くなる。

「でもさぁ…花村さんへのストーキングなら、どうして会社のポストに届くのかな?ストーカーなら家とか盗撮しそうじゃない?これだとまるで素行調査みたいよね」




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