【完】ふたりは幼なじみ。〜クールな執事の甘い溺愛〜
こういう時、人間って本性が出るんだなぁって、思う。
女の子置いて逃げちゃう男子なんて、さすがにごめんだよ。
「…ゲホゲホッ」
あたりは煙がますます充満して、視界が悪くなってきてる。
やばい。こうしてる場合じゃない。
私は自分も逃げなくちゃと思い、慌ててその場から立ち上がろうとした。
だけど、
「あれっ?」
なぜか、片腕が引っかかって起き上がれない。
なにかと思って見てみたら、なんと、さっき突き飛ばされた勢いで倒れた棚が、振袖の左袖の上に全面的に乗っかって、袖が下敷きになっている状態だった。
……嘘でしょ。
しかも、引っ張ってもなかなか抜けない。
慌てて右手で棚をどけようと持ち上げる。
しかしながら、片手しか使えないこの体制では、その棚は重くて持ち上がらなかった。
一瞬、恐怖で目の前が真っ暗になる。
……どうしよう。逃げられないよ。
こんな動きにくい振袖なんて着てくるんじゃなかった。