【完】ふたりは幼なじみ。〜クールな執事の甘い溺愛〜
「や、嫌だ。誰かっ……助けて!!」
どんなに引っ張っても袖は抜けないし、破れない。
必死で脱ごうとするけれど、帯も片手じゃうまく解けない。
スマホが入ったカバンにも手が届かない。
こんなにも絶望的な気持ちになったのは初めてだった。
私、このまま死んじゃうの……?
思わずパパとママの顔が浮かぶ。
それと同時になぜか、かーくんの顔が浮かんだ。
嫌だ…。このままみんなに会えなくなるなんて。
こんなお別れの仕方、あんまりだよ。
必死でその場でもがき続ける。
汗だくになって、息をするのもやっとだった。
でもあきらめたらおしまいだ。
「…いやっ…お願いっ。
ゲホッゲホッ」
だんだんと息苦しさが増してくる。
体に力が入らなくなって。
でも残された力を振り絞って、声の限り叫ぶ。
「誰か、助けてっ!!!!」
届かなくても、来てくれるって信じたかった。
こういう時きっと、かーくんなら……いつも真っ先に来てくれるのに。
かーくんは今どこにいるの…?
早く会いたい…。助けて。
かーくんの言うとおり、お見合いなんてするんじゃなかったね。
私がバカだったのかな。
ごめんね、かーくん…。
だからお願い。いつもみたいに、私のこと……
助けに来てよ。
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