【完】ふたりは幼なじみ。〜クールな執事の甘い溺愛〜
電車が来る前にと思い、慌てて声をかけたら、その人は振り返ってすぐに受け取ってくれた。
「ど、どうもっ、ありがとうございます…っ。
へへへ、へへっ…」
無精ヒゲを生やした彼は、なにやら挙動不審な様子で、私を見てやたらとニヤニヤしている。
それを見たら思わず少しゾッとしてしまったけれど、すぐに乗車口のドアが開いたので、かーくんに手を引かれるままギュウギュウの車内に乗り込んだ。
ーーガタン、ゴトン……
案の定、車内はすごく混み合っている。
もちろん、さっきの男の人も一緒で、ドアの前のすぐ近い位置に立っていて。
なぜだかジロジロ見られているような気がするのは、気のせいかな?
「…ハァ、ハァ、」
しかもなんか呼吸が荒い気がするし…ちょっと気持ち悪い。
暑いのかな?
たしかにすごく混んでて、酸素が薄いような気もしなくはないけど…。
ーードンッ!