【完】ふたりは幼なじみ。〜クールな執事の甘い溺愛〜
だけどその瞬間、思いきり強く抱きしめられた。
「……っ、バカ」
かーくんの腕が、声が、震えてる。
「嫌に…決まってんだろ。
俺だって、おまえのそばにいてぇよ…」
「…っ」
「お前のことはずっと、俺が守るって決めたんだ。
なのに、くそっ…」
苦しそうにつぶやくその声に、胸がぎゅっと締め付けられる。
それを聞いて思った。
かーくんだって、悔しい気持ちは同じなんだ。同じように辛いんだ。
ううん。もしかしたら、私よりもっと辛いのかもしれない。
「かーくん…っ。
私だって、離れたくないよ…」
しがみつくようにかーくんの胸に顔をうずめる。
「ごめんな、りぃ」
「謝らないで…」
「ごめん…」
『ごめん』が『サヨナラ』みたいに聞こえる。
どうしてこんなことになっちゃったんだろう。
もうどうしようもないの…?
私たちは、いつだって一緒だったのに。
お互いそれが当たり前だったのに。
明日からは、かーくんが隣にいない毎日が始まるんだ。
そんなの嫌だ。嫌だよ…。
お願いだから嘘だと言って。ねぇ。
かーくんと一緒にいさせてよ……。
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