【完】ふたりは幼なじみ。〜クールな執事の甘い溺愛〜
「りぃ…」
りぃの頭にポンと手を乗せる。
俺は内心苦しくてたまらなかったけれど、わざと冷たい声で言い放った。
「もう俺を…頼るな」
「えっ…」
りぃの表情が一気にこわばる。
そして、急に泣きそうになった。
「なに…それ…。
なんで…そんなこと言うの?」
そんな顔されたらますます辛くなる。
俺だってこんなこと言いたくねぇよ。
だけど、そうするしかないような気がした。
「俺はもう、お前に何もしてやれない」
突き放すしかないんだ。
「…だからもう、俺に構うな」
胸の奥がキシキシと痛む。
自分まで泣きそうになってくる。
だけど心を鬼にして、グッと耐えた。
りぃは目に涙を浮かべている。
俺はそれを見ないふりをする。
しばらくの間、沈黙が流れて…。
「……っ、わかった」
りぃはそう答えると、ハンカチで口を押さえながら、走ってその場を去って行った。
俺はその背中を見つめながら、立ち尽くす。
…これで、いいんだよな。
「……ごめんな、りぃ」
小さくつぶやいたその声は、彼女の耳に届くことはなかった。
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