宝物な君と
オレはこの時、あまりに低い声音でしゃべるじいちゃんに、それ以上反論できなかった。

と、言うよりも。

なんだかひどく胸騒ぎがして、会議の続きが頭に入らなかった位だ。

さっさと重要案件だけまとめ、早足になりながら蒼空と副社長室に戻る。

蒼空も神妙な面持ちで、お前そんな顔できたんだな…とか思ってしまう。

「じいちゃん、何があった?」

部屋に入ってすぐ、じいちゃんの座っているソファーの前に座る。

じいちゃんは目を瞑ったまま、微動だにしない。

蒼空も服部さんの前に、恐る恐る座る。

服部父も怖い顔してんな。

オレ、何かしたか?

「……永久。女がいるっていうのは本当か?紅さんはお前の本命じゃなかったのか?」

「!どういうことだ?」

オレを睨み付けながら、じぃちゃんがゆっくりと話し出す。

声は落ち着いているが、隣りにいる蒼空はビクッと体が揺れていた。

てか、意味がわからねぇ。

女?

「紅さんは遊びか?それならやめておけ。あの子はお前に勿体ないくらいの良い子だ。すごく真面目で、何よりも七くんが傷つくのを全力で阻止する母親だ。」
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