宝物な君と
やっとエレベーターが来て、二人で乗り込む。

途中の階で停まるエレベーターにイライラする。

さっさと乗れ!

ちんたら乗ってんじゃねーよ!

思わず舌打ちがでる。

乗ってきた女子社員二人は、それにビクッと怯えたもののすぐに笑顔で挨拶してくる。

「お疲れ様です、副社長、服部さん。」

「お疲れー。」

軽い返しの蒼空と。

「ああ。」

不機嫌なオレ。

まぁ、いつものオレ達だ。

「副社長~服部さん、こんどご飯でも連れていってくださいよ~。」

何言ってんだ、コイツ?

媚びる女にうんざりする。

無視をし続けていると、ペラペラと話が終わらない。

「そうだ!こんどコンパしましょうよ、服部さん!」

目も合わせないオレと、愛想の良い蒼空。

必然的に話しかける相手が蒼空になる。

だが、今日は蒼空もそれどころじゃねぇ位焦ってる。

それはこの場の雰囲気でわかる。

てか、副社長とその秘書をコンパに誘うか、普通?

人事はどんなヤツが、選んでんだよ!

「ごめんね~!今、急いでるんだ。」

苦笑いしながらも、きちんと返してやるコイツを時々尊敬する。

オレは絶対無理だから、やっぱり蒼空がオレの秘書なのは適任だよな。



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