私の存在価値
何着もの中から選んだのは
黒のオフショルダー型のすらっとしたドレス。腰の後ろに白の大きなリボンがついていて見てすぐにこれに決めた。
靴はドレスの色に合わせ黒の4cm程のヒール。

いつもは下ろしている髪は緩めにカールをかけ、ポニーテールに。
今までしたことの無かったメイクも今回してもらった。

準備が終わり、鏡を見てみるとさっきとは別人に変身した。

私「これが…私?」

メイクって凄い…!!感激だよ!
メイクってこんな薄くても変わるんだ…。

祖母「どう?着てる服と髪型とメイクでこんなにも変わるのよ?」

私「ビックリ…!私じゃないみたいだよ!」

祖母「ふふっ♪喜んで貰えて嬉しいわ〜♪
じゃあ行こうか。」

そういい祖母は誰かに電話をかけた。
多分運転手の柳田さんだろう。

祖母「あ、もしもし?…えぇ。表に車をまわして頂戴。えぇ。じゃあお願いね。
夢音行こうか。」

私「うん。」

私はおばあちゃんの隣を歩いた。
おばあちゃんは落ち着いた色合いの着物を着ている。
とても品があって綺麗だ。
シワが少なくハリのある肌、曲がっていない背中。
どこを見ても素敵な女性だ。

祖母「ん?私の顔に何かついてるかしら?」

あまりにまじまじの見ていたので視線に気づいたおばあちゃんが私の方を見た。

私「ううん!!何もついてないよ!」

祖母「そう?あ、ついたよ。」

玄関に付いた。そこには既に柳田さんとはじめに乗ってきた車が止まっていた。

おばあちゃんが車に乗り、私も乗る。
そして車が走り出す。
数分後、大きなお屋敷へ到着した。

柳田「奥様、夢音様着きました。」

祖母「ありがとう柳田。夢音 」

おばあちゃんが私に言う。

「貴方は今からNo.1財閥の次期社長よ。貴方はそれに見合った行動を取りなさい。歩き方、話し方、聞き方、食べ方など、品のある行動をしなさい。
お母さんから色々教わったでしょう?」

お母さんからはありとあらゆる行動のしかたを教えて貰った。
昔は何のために使うのか分からなかったけど、今日のこの日のためのものだったんだ。

祖母「この車の外には沢山の人達がいるの。それは何故か分かる?」

この車の外……この車は柊財閥の…………あっ。

私「No.1財閥の社長を観たいから…?」

おばあちゃんは私の答えに指で○をつくって見せた。

祖母「そう正解。それもあるだろうけど、本当の目的は夢音。貴方を見るためよ。」

私「わた…し?」

何で私なんか見たいんだろう。

祖母「貴方は柊財閥の何?」

私「柊財閥の……次期社長。」

祖母「そう正解♪だから、期待されている分期待を裏切らないよう行動しなさい。分かった?」

なるほど…。世界No.1の財閥を引き継ぐ者として相応しいかどうか見られるって事か。簡単に言えば審査ってことね。

私「分かった。今までに身につけたことをこの場で発揮するよ。」

私が公の場でヘマするわけ無いしね。

祖母「うん♪その心意気だよ。じゃあ、柳田。ドアを開けて頂戴。」

柳田「御意。」

そう言い柳田さんが車を降り、助手席のドアを開ける。
おばあちゃんが降りた瞬間辺りから歓声が聞こえた。
そして次は私の番。
後ろのドアが開く
そして私はゆっくりと車を降りた。
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