顔も知らない君へ
案の定、電話から聞こえる優斗の声は焦ってて。
『すんません!』
って連呼してた。
そのくらい先輩の声は恐くて、いつもと違ってたから。
『お前、もう娘とはヤッたのか?』
先輩がそう言った時に聞こえた優斗の『え?』って声に我慢は限界で、アタシとガタイのいい先輩ば声あげて笑ってしまって。
『お前等声出したらバレるやん』
って笑いながら先輩が言ったから電話の向こうの優斗は『えぇっ!?もしかして…』ってようやく気付いた感じで、また笑えた。
『まーた一緒に居るんすかぁ』
って優斗の声が聞こえて
『おぅよ。羨ましかろう。色気もクソもないがな』
って先輩が笑って。
アタシが先輩を軽く叩いたら先輩また笑った。
『優斗も暇してるんやったら来なよ。もちろん買い出ししてな』
って先輩が優斗を若干パシリにしながら誘ったら優斗は『忙しいけど仕方ないから行ったるわぁ』って言ってた。
『忙しいなら来んな。ビールと適当にチューハイ。ゲコが居るからポカリでも買ってきてやって』
先輩はそう言って返事を待たずに電話を切った。