嘘つき天使へ、愛をこめて
櫂はよく分からない。
相変わらずパソコンを手放すことなく、ひたすらにカタカタカタカタやっている。
そこへ、先生に呼ばれて出ていっていた雅が戻ってきた。
なにやら盛り上がっている幹部メンバーに、ふうんと片眉をあげる。
「玲汰が起きてるとか珍しいな」
「あー総長おかえり!今さ、サリちゃんち行きたいねって話してたんだよ」
雅の視線があたしへと向く。
目が合って、なにか試されるように見つめられたものだから、あたしは僅かに眉を寄せた。
「なに、雅」
「いやサリんちなら俺も興味あるなって」
まさかの雅まで行きたいと言い出すのか。
あたしが露骨に嫌な顔をして見せると、玲汰が不満そうに嫌な顔を返してくる。
「……ダメなの?」
うっ……!
普段寝ている姿しか見ないからか、玲汰にそんな顔をされるとこっちが悪いことをしている気分になってしまう。
ホントの小悪魔は玲汰かもしれない。
まぁ別に来られて困るものがあるわけでもないし、いいんだけどね。
「狭いよ、あたしんち。全員で来たら、床が抜けるかもしれない」
「なにそれ面白そう」
唯織の目が一層輝いた。
心なしか、玲汰もほっとしたように笑っているような気がする。
この二人はもう何を言っても無駄だと悟った。
ちらりと雅へ視線を投げると、何を考えているのかよく分からないニコリとした笑みが返ってきて、あたしはもう一度深い溜息をついた。