嘘つき天使へ、愛をこめて


というか、全員分のコップもない。

我ながらどうここで生活しているのか不思議になるくらい、色々、足りない。


「ごめん」


謝りながら出ていくと、皆は気にするなとでも言いたげに笑ってくれた。


ほっと安堵して、あたしも座ろうとすると突然ぐらりと視界が揺れた。


「っ……!」


あ、やばい、と思ったが否か、倒れかけた身体をいつの間にかそばにいた雅が受け止めてくれる。


「大丈夫か」


雅にしてはやけに真剣な声音に大丈夫だと頷いて見せるけれど、目眩はなかなか収まらない。


「どうした、サリちゃん大丈夫か」

「何!?立ちくらみ!?」

「……?天……じゃない、サリ……?」

「お前らうるさい。目眩がする時に騒いだら悪化するだろうが」


メンバーも口々に声をかけてくれる。


櫂が正論で宥めていることに思わず笑いそうになりながら、あたしは雅の腕に掴まった。


「ごめん、ありがと雅」


「また目眩?」


「ああ、うん、いつもの。貧血でね」


最近、さらにこういう事が多くなった。

頭痛も吐き気も目眩も倦怠感も、日に日に少しずつ強くなっていく。


時間が時間だ。

タイムリミットは、もしかしたらもう半月もないかもしれない。


どんどん身体を蝕んでいく病というよりも、一歩ずつ死に歩いて行っているこの感じ。


嫌な、ものだ。本当に。
< 106 / 225 >

この作品をシェア

pagetop