嘘つき天使へ、愛をこめて
「柊真、あの」
「ん?どうした?」
あたしが洗った食器を、拭きながら棚へ戻していく柊真に小さく声をかける。
そこで思いとどまった。
せっかく作ってくれているのに、食べれなくてごめんね、なんて言えない。
「あ、えっと……美味しかったよ、今日も」
「おおそりゃ良かった。相変わらず少食だからなぁ、サリちゃんは。なにか食いたい物のリクエストでもあれば受け付けるぞ」
柊真は相変わらず大らかで、あたしが残してもなにも言わない。
むしろよく食べたな、なんて褒めてくれるくらいだ。
ここへ来てから分かった。
いいや、さらに、分かった。
雅を含めて、胡蝶蘭のメンバーたちは、やはり族らしくない。
一般的なそこらの男子高校生よりも、よっぽどまともなのではないかと思うくらいに、自立もしているし優しい。
柊真は特に、同い年の癖に大翔と同じくらいの寛容さを持ち合わせているし、確実に保護者である。
……少し特殊だけど雅もそう。
雅に関しては、やっぱりよく分からないことが多いけれど、最近は一緒にいることが増えた。
学校でも、屋敷でも。
ふと気づいたら、近くにいるのだ。
最初は警戒されて見張られているのかと思ったが、そうでもないらしく、普通に隣で眠ってたりするし、単に居座る場所が近いだけなのかもしれない。