嘘つき天使へ、愛をこめて


「柊真、あの」

「ん?どうした?」


あたしが洗った食器を、拭きながら棚へ戻していく柊真に小さく声をかける。


そこで思いとどまった。

せっかく作ってくれているのに、食べれなくてごめんね、なんて言えない。


「あ、えっと……美味しかったよ、今日も」

「おおそりゃ良かった。相変わらず少食だからなぁ、サリちゃんは。なにか食いたい物のリクエストでもあれば受け付けるぞ」


柊真は相変わらず大らかで、あたしが残してもなにも言わない。

むしろよく食べたな、なんて褒めてくれるくらいだ。


ここへ来てから分かった。

いいや、さらに、分かった。


雅を含めて、胡蝶蘭のメンバーたちは、やはり族らしくない。

一般的なそこらの男子高校生よりも、よっぽどまともなのではないかと思うくらいに、自立もしているし優しい。


柊真は特に、同い年の癖に大翔と同じくらいの寛容さを持ち合わせているし、確実に保護者である。


……少し特殊だけど雅もそう。


雅に関しては、やっぱりよく分からないことが多いけれど、最近は一緒にいることが増えた。

学校でも、屋敷でも。


ふと気づいたら、近くにいるのだ。


最初は警戒されて見張られているのかと思ったが、そうでもないらしく、普通に隣で眠ってたりするし、単に居座る場所が近いだけなのかもしれない。
< 120 / 225 >

この作品をシェア

pagetop