嘘つき天使へ、愛をこめて
「……大翔は、里親だよ」
「……里親?」
大翔が弾かれるように顔をあげた。
「身寄りのないあたしを引き取ってくれたの。だから大翔はあたしの兄みたいな人」
「嘘でしょ、ちょっと待って!今の話本当なのかよ、大翔さんっ」
唯織がたまらないと言ったように立ち上がり、大翔へ詰め寄った。
大翔は一瞬顔を歪めたが、小さく頷く。
嘘はついていないのだから当然だ。
「あたしがここへ来たのは、大翔に言われたから。それ以外の何物でもない」
「……敵意はないって、そういうことか」
柊真が呆然としたように呟く。
玲汰はまだよくわからないと言ったように、あたしを見つめていた。
「だが、なぜ言わなかった?最初から大翔さんのことを話していれば、俺たちが警戒することもなかっただろう」
櫂が静かに口を挟む。
たしかに、ごもっともだ。
でも、それは今だから言えること。
「……知らなかったから。大翔が胡蝶蘭の初代総長だなんて。昨日初めて聞いて、あたしが一番驚いてるんだよ」
皆の視線が大翔へ集中する。
うっ!とバツが悪そうな顔をして、大翔は目を泳がせた。