嘘つき天使へ、愛をこめて
「あ、サリちゃん、大丈夫だ。自分らでやるから」
「いい。やる」
柊真が我に返ったように立ち上がるが、あたしは救急箱を抱え込んで、むっと顔を顰める。
今は何も考えたくない。
それに、この状態のみんなを放っておくなんて、あたしには出来そうになかった。
幹部メンバーたちは戸惑ったように顔を見合わせていたけれど、それ以上は何も言わずに大人しく治療を受けてくれる。
さっきの話の手前、口が開きづらいのかもしれない。
いつもは喋りっぱなしの唯織ですら、チャックでも付いているかのように、唇を縫い止めている。
「ねえ」
仕方なく、あたしから切り出すことにした。
「昨日、そんなに激しい喧嘩したの?」
玲汰の切れた頬に、容赦なく消毒液を含んだガーゼを押し当てると「……痛い」と悲しそうな顔をされた。
これくらい我慢しなさい、男なんだから。
「昨日は……まあ、なんか激しいというより巻き込まれ感が凄かったよね」
「巻き込まれ感?」
「うん、総長が荒れててさ」
唯織がやっと喋れると言ったように口を開く。
雅が荒れてた?