嘘つき天使へ、愛をこめて
「雅があまりに本気になって向かっていくもんだから、向こうもそれなりに対応しなくちゃならなくて……いてっ」
唯織の口元は、3ヶ所ほど切れていた。
痛々しいったらありゃしない。
「あれは、完全に八つ当たりだな」
櫂が呆れたように言う。
隣で柊真が苦笑を零して「まあな」と同意を示した。
「普段は冷静沈着な雅が派手に暴れるもんだから、向こうも驚いただろーね」
「実際、だいぶ焦っていただろう。簡単にガキ共を引き渡してきた上、結局は退散して言ったからな。情けねえ」
唯織と櫂は思い出したのか、渋い顔をする。
どうやら雅が荒れると、その被害が味方にまで及んでしまうらしい。
「……それだけ、総長は、天使のことが気になってるって……こと、でしょ」
「玲汰?」
珍しく玲汰が寝ずに、あたし達の話を聞いているかと思ったら、そんなことを言い出した。
気になってるって、どういう意味で?