嘘つき天使へ、愛をこめて
「……だって、総長は」
「玲汰」
柊真の諭すような声に玲汰が口を噤む。
「それは玲汰が言っちゃいけない」
「でも……っ」
「玲汰」
あたしは咄嗟に、玲汰の手を握る。
驚いたように固まり、瞳を揺らしてあたしを見た。
昨日、玲汰の過去を知った。
それは決して笑って流せるような話ではなくて、聞いているだけでも玲汰が幾多も辛い思いをしてきたのだと分かる。
あたしと玲汰は似ているのだ。
でも、似ていてるけれど、違う。
だって玲汰はもうここの皆と出逢うことが出来たから。
自分の居場所を見つけることが出来たから。
「……ねえ、玲汰」
「え……?」
「玲汰は、ひとりじゃないよね」
あたしのことを救ってくれようとしていたのは、気づいていた。
多分、一番最初にあたしの心の闇に気づいて、手を差し伸べてくれたのは玲汰だった。
『ここにいて』と言い出したのも『ここに来て』と再び誘ってくれたのも玲汰だった。
あたしが玲汰と自分を重ねていたように、きっと玲汰自身もあたしを自分と重ねていたんだろう。
そして、救ってくれようとした。