嘘つき天使へ、愛をこめて


「でも、そんな雅も合わせて、皆はあたしなんかを招き入れてくれた」


自分たちの大切な家に、見ず知らずの目的も分からない女を。


「もう、十分だよ。本当に夢みたいな時間だったよ」

「ちょっと待て、サリちゃん、そんなまるでお別れみたいな……」

「ありがとう、みんな」


あたしは、パタンと救急箱を閉める。


いつどうなるか分からない。

言っておきたいことは、もう我慢せずにはっきりと言おう。

死んでから後悔したって、遅いのだから。


「……それから、嘘ついてごめんね」


「嘘?」


「本当、少し後悔したりもしたけど、ここへ来て良かっ……」


不意に意識が遠のいた。


ぐらっ……。

電源ボタンに触れられたように、あたしの視界はシャットアウトしていく。


「サリちゃんっ!」

「サリっ!」


ねえ、神様。


この世はどうして、こんなに理不尽なんですか。

どうして、あたしでなければならなかったのですか。

これは、なんの報いなのですか。


「おい!なにがあっ……!?」

「――サリッ!」


遠のく意識の中で、暗闇のさなかにあたしはぼんやりと誰かの声を聞いた。

とても必死で、泣きそうな、あの人の声を。
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