嘘つき天使へ、愛をこめて
それにしても、大翔が病気のことを話さなかったのは驚きだ。
あたしの思いを汲んでくれたのだろうか。
でもこれだけ激しく倒れていたら、皆も疑わずにはいられないよね。
さっきの会話を思い出す。
『本当に、貧血なのか?』
貧血なんて、そんなものじゃない。
記憶が飛んでいることも、手が麻痺して動かなくなるのも、頻度が増している。
どうしたってあたしは、もう病気から逃げられはしない。
ここにいては、いけないのだ。
するりとベットを抜け、あたしは物音をたてないように鞄を引っ張り出した。
元々少ない荷物を放り込むようにしていれていく。
服と薬、それから残高の少ない通帳。
制服はいい。置いていく。
もうあの学校にだって通えないから。