嘘つき天使へ、愛をこめて


「くっそ……っ!馬鹿かあいつ!」


また、電柱を素手で殴っている。

机の時といい、もう何度目か分からない。


手には血が滲み、その形相は今まで見たことのないくらい焦りを浮かばせていた。


「雅」

「……柊真、俺はどうしたらいい」


わからねえ、色々と。

頭の中が藻屑のようにぐちゃぐちゃだ。


「大切なんだろ、サリちゃんが」


柊真は冷静だ。

いつだってメンバーのことを一番理解して、気をかけているのは柊真だ。

よっぽど、俺より総長に向いていると思う。


「逃げるな、雅。大切なもんを作ることから。守ることから、目を背けるな」


わかってる。

頭ではわかってるんだ。


でも、フラッシュバックする過去は俺をその場に縫いとめる。

まるで重たい鎖のように。

お前は罪から逃げられないと囁いてくる。


「……また、守れねえかもしれない」


強くなろうと努力した。

けれど、もしかしたら俺はあの時から少しも変わらないまま、まだ無力なのかもしれない。


それを思い知らされるのが怖い。

あの時と同じ思いをするのが、怖い。

とてつもなく、怖いんだ。
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