嘘つき天使へ、愛をこめて


「いつまでそうやって甘えているつもりだ」


そこへ、櫂が階段を降りてくる。

情報収集のために、櫂はひとり屋敷へ残る手はずだったのにどうして。


「雅、昨日も言ったはずだ。お前は総長としての自覚が足りない」

「っ……!」

「俺が言っているのは、強さだとかそういうことじゃない。覚悟の問題だ」


静かに刺さる櫂の言葉が痛い。


「いいか。過去や思い出といくら戦ったって勝てやしない。大切なのは、今お前が誰を想って、誰を守りたいかだろう」


「誰を想って、誰を……」


守りたいか。

サリの切なげな儚い笑顔が頭に浮かぶ。


俺は、サリを想ってサリを守りたい。

大翔さんとは恐らく違う感情で、そう思う。

初めてだった。こんな風に思った女は。


俺の過去を知っている柊真や櫂だからこそ、今迷っている俺の背中を押してくれようとしているのだろう。


けれど、頭では分かっていても、気持ちが追いつかない。
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