嘘つき天使へ、愛をこめて
◇
何もかもがめまぐるしい1ヶ月だった。
胡蝶蘭のみんなと、雅と出逢ったのがもうずっと昔のことのような気がする。
手術なんて受ける気はなかった。
これ以上生きている気もなかった。
それでもあたしは、今、もう一度生きる道へと歩きだそうとしている。
……この道の先で、大切なものを失ってしまうかもしれないのに。
「サリ」
気遣わしげな声に、あたしは顔をあげる。
雅らしくもない不安そうな顔が目に入って、思わず小さく笑った。
「なんであたしよりも不安そうなの」
「サリがそんな顔してるから」
そんな顔って、どんな顔だろう。
今まで感情を表情に出すことなんてなかったのに、あたしも随分変わったものだ。