嘘つき天使へ、愛をこめて
だって、君と出逢っていなければ、生きようなんて思わなかった。
胡蝶蘭のみんなと出逢っていなければ、今ここにいることだってなかった。
苦しくて。
……張り裂けそうなくらい、切ない想いを抱くことだって、なかった。
「後悔……したんだよ。でも、でもね」
どうしてもあたしは、その後悔もろとも君を愛しいと思ってしまう。
「うっ……ひくっ…」
馬鹿みたい。
こんなの、本当に馬鹿みたいだ。
自分がわからない。愚かだと思う。
このままだと更に傷つけてしまうのに。
大切な人の心さえも、あたしには包むことが出来ないのに。
病気が治らないとか、手術が成功するかとか、そういうことよりも。
あたしは、雅を、大翔を、胡蝶蘭のみんなを失うことが何より怖い。
これまで過ごしてきた時間を、なにもかも忘れてしまうことが怖いんだ。
「……サリ」
そっと、優しく雅の冷たい手が頬に触れた。
指の腹で雫を拭い、髪を耳へかけられる。
「俺を見て、サリ」
その静かな意志を持った声に、おずおずと涙でぼやける瞳を開けた。