嘘つき天使へ、愛をこめて
「ここらへんに〝胡蝶蘭〟っていう暴走族があるって聞いたんだけど……知ってる?」
────空気が、変わった。
「……こ、ちょうらん……は……」
「知ってるもなにも……っ」
その名が出ただけで血相を変えた彼らに、あたしはその答えを肯定だと受け取った。
フードの下でスッと目を細めて、僅かに口角を上げる。
「そんな怖がらないで」
あたしのなんてことはないその言葉も、彼らにとっては恐怖を付け足されたようだった。
暗闇の中でも、彼らに警戒の色が浮かんでいるのがわかる。
「もうひとつ。〝胡蝶蘭〟の総長の名前、知ってるなら教えてほしいんだけど」
「は、はぁ!?」
「あの悪魔を……お前、知らないのか!?」
……悪魔?
ふうん、そう呼ばれてるんだ。