嘘つき天使へ、愛をこめて
声を荒げた男の反応に、少しばかり驚く。
これは思いがけず良い情報を得られた。
こんな場所で溜まっているような不良でも、これほど怖がらせる悪魔ってどんな人だろう。
そう考えると、さらに興味が湧いてきた。
「ねえ」
「どんな関係だって聞いて……っ!」
ああもう、めんどくさいな。
「質問に、答えて」
男の声を遮り、フード越しに睨みつける。
向こうからは見えないはずなのに、それだけで何人かが怯えた表情でたじろいだ。
じりっと後ずさる者もいる。
「な、なんで女に命令されなきゃいけねぇんだよ……っ!」
「……おい、コイツなんかやばい気がする」
ごちゃごちゃ、ごちゃごちゃ。
耳を塞ぎたくなるような衝動に駆られながら、あたしはズキッと痛んだ頭を押さえる。
……そうだ、急がないと、もう時間がない。
不思議の国のアリスに出てくる、時計を持ったウサギのような気分だった。
ちくたくちくたく、時は確実に進んであたしを蝕んでいく。
のんびりなんてしてる暇はない。