嘘つき天使へ、愛をこめて
「……どうにも、ならないか」
自嘲して、一気に口に放り込む。
この量をいっぺんに飲むのも慣れてしまっていて、鏡に映る自分がとても惨めに見えた。
「さて、と」
ケースをポケットの中に戻す。
気を取り直して、手櫛で髪を整えてから女子トイレを出ると、そこに思わぬ人影を捉えて心臓が飛び上がった。
「っ……み、雅?なにやってんの?びっくりした」
「んー、見張り?」
「変態。女子のトイレについてくんな」
そう言いつつ、動揺を隠すように壁に寄りかかるようにして立っていた雅をキッと睨みつける。
その楽しそうな顔は、なんとなく見張りというよりも心配して来てくれているような気がして、さらに戸惑ってしまった。
そんなわけないのに。
相手は、天下の胡蝶蘭の総長様なんだから。
突然転校してきた女に対して、警戒を覚えるのは至極当然。
わかりきったことなのに、なぜか胸がちくりと痛んだ。