嘘つき天使へ、愛をこめて


「そっちから何か仕掛けてこない限り、あたしは何もしないよ。担任にも警戒視されてるし心休まる時がないんだけど」


「ああ、翔さんは前代総長で警戒心の強い人だから仕方ない。あの人、怒らせたらホント怖いんだよな」


「……前代総長、ね」



すなわち、雅の前に総長だった人だ。

どうりで雅と雰囲気が似ていると思った。


「どうでもいいけどね。早く戻ろ、雅」


あたしは雅を置いて歩き出す。


……今日はいつもより頭が痛むな。


悟られないようにするのも苦労するため、無駄に苛つきとストレスが溜まる。

ちらりと後ろを振り返れば、平然とした顔で付いてくる雅。


総長がひとりで出歩くって、どうなの?


あたしが知ってる暴走族とはやはりだいぶかけ離れている。

かけ離れすぎて、もう訳が分からない。
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