嘘つき天使へ、愛をこめて




どうも、上手くいかない。


「何であたしが」

「いーじゃん、総長自ら来いって言ってるんだし!」

「良くない。全然、良くない」


引きづられるように、半ば強制連行になりながら放課後〝倉庫〟とやらに連れて来られたあたし。


ねえ、これのどこが倉庫なの?


「大体これただのガレージじゃん。てか誰の家なの、このデカい屋敷みたいなやつ」


大きめのガレージの上に立つ屋敷のようなそれに思わず仰け反る。


これのどこが倉庫だというのか。

どう見たって立派な一軒家にしか見えない。


いったい誰の懐からこんな家を買うお金が湧いて出たんだろう。


「この家は、俺らの帰る場所だよ。まあサリちゃんも入れ。何もねえけど」

「ちょっと柊真。あんた、やすやすと情報与えるなって自分で言ってなかった?」

「今日1日見てて、サリちゃんがどっかの族のスパイじゃないことは分かったからな。別にいいかって思った」


……軽いな、胡蝶蘭。

ここまでくると、胡蝶蘭の警備体制がどうなっているのか、こっちが不安になってくる。


心配する義理なんてないのに。
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