嘘つき天使へ、愛をこめて
◇
どうも、上手くいかない。
「何であたしが」
「いーじゃん、総長自ら来いって言ってるんだし!」
「良くない。全然、良くない」
引きづられるように、半ば強制連行になりながら放課後〝倉庫〟とやらに連れて来られたあたし。
ねえ、これのどこが倉庫なの?
「大体これただのガレージじゃん。てか誰の家なの、このデカい屋敷みたいなやつ」
大きめのガレージの上に立つ屋敷のようなそれに思わず仰け反る。
これのどこが倉庫だというのか。
どう見たって立派な一軒家にしか見えない。
いったい誰の懐からこんな家を買うお金が湧いて出たんだろう。
「この家は、俺らの帰る場所だよ。まあサリちゃんも入れ。何もねえけど」
「ちょっと柊真。あんた、やすやすと情報与えるなって自分で言ってなかった?」
「今日1日見てて、サリちゃんがどっかの族のスパイじゃないことは分かったからな。別にいいかって思った」
……軽いな、胡蝶蘭。
ここまでくると、胡蝶蘭の警備体制がどうなっているのか、こっちが不安になってくる。
心配する義理なんてないのに。