嘘つき天使へ、愛をこめて
「雅みたいにもう少し疑うとかしたらどうなのよ……」
ぶつぶつと小言を零すあたしを、唯織と柊真は呑気に笑い飛ばしながら屋敷の中へと連れ込んでいく。
後からやってきた雅を含めた他メンバーも、渋るあたしを追い越して慣れた様子でリビングらしき部屋に入っていった。
重圧感漂うダークブラウンの扉の先には、まるで族の家とは思えないほどお洒落な部屋が待ち受けていて、本日最大の衝撃に襲われる。
「な、な、なにこれ……」
全体的にアンティーク調にまとめられ、かつシンプルに、古来のヨーロッパ貴族が住んでいるのではと思わせるような内装。
輸入家具と呼ばれるものだろうか。
ソファもテーブルもチェストも、普通のものよりも二回りほど大きく構えている。
あまりに想像とかけ離れすぎて、開いた口がふさがらずに入り口で立ち尽くしていると、見かねたらしい唯織と柊真にキャッチボール並みのノリでソファへ投げられた。
ヒヤリとしたのは一瞬で、あたしはどっしりと構えたソファに『任せろ』と受け止められながら、キッと二人を睨みつける。