嘘つき天使へ、愛をこめて
「っ……ちょっと!?」
「わー、サリちゃんが怒ったー」
「まあ落ち着け、サリちゃん。唯織もふざけてないで、こっち手伝ってくれ。この部屋の雰囲気の中で喧嘩なんてしたくないだろ」
「なになにー、おやつでもあんの?」
猫のように毛を逆立てるあたしを置いて、柊真と唯織は部屋の奥にあるキッチンらしい場所へ行ってしまった。
なんなのよ……と唇をかみながら、仕方なくあたしはこんなことになった元凶である雅を睨みつける。
そもそもこいつが倉庫だなんだと言い出さなければ、こんなことにはならなかったのに!
「みや……」
「ああ、今日の集合は18時。それまでガキ共は来ないから、サリは適当にゆっくりしてて」
「あたしの話を聞け!」
ここまで来てしまったからには、ただで引き返せないことくらいわかってる。
でもだからこそ、早くこの状況をどうにかしないといけないんだ。
だって、このままだと遠からずマズいことになるのは目に見えてるし。
そんなあたしの焦りなど知る由もせず、雅は一人掛けの大きなソファに座り、何やらノートパソコンをいじりはじめた。
まるで女なんて眼中にないと言われているようでカチンときながらも、これ以上声を荒げたところで何も変わりそうにないので、グッとこらえた。
櫂は話しかければ答えてくれるけれど、相変わらず無駄に喋ることはせず、あたしと向かい側のソファに座り本を読みはじめる。