嘘つき天使へ、愛をこめて


「なるわけないでしょう。姫になんかなるくらいなら、総長の座を奪い取った方がずっといい」

「……それはなんで?」

「決まってる。守られるだけの女には絶対になりたくないから」


守られて自分の生きる意味を見失うくらいなら、死んでもひとりで戦い抜いた方がずっとマシ。


あたしはあの人にそう教わった。

何もせず朽ちていくくらいなら、たとえ希望が見えなくても抗え、もがけ、最後まで。


一見平和にみえても、争いや嘘が絶えないこの世界で、唯一自分だけは信じられる存在であれ――と。


だからあたしはここに来たんだ。


あたしがこの世界で自分を除きただ一人、心の底から信じているあの人が話してくれた、この胡蝶蘭を知るために。
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