嘘つき天使へ、愛をこめて
「な……っ」
避けられたことに驚いたのか、頭の上で目を見開くその男。
さすがにこれだけ近ければ、暗かろうが顔も見える。
その顔はあまりに滑稽で、あたしは呆れながらため息をついてさらに冷たい目を向けた。
「……暴力は嫌いって、あたし言ったはずだけど?」
「っ……てめぇ……!」
血走った目。
明らかに話が通じる相手ではない。
もう完全に頭がいっちゃってる。
「……可哀想、だね」
せっかく感情を持って生まれてきたのに、どうしてそれを放棄してしまうのか。
こんな彼にだって、屈託なく笑えていた頃があっただろうに。
まあ、感情という感情を殺して生きてきたあたしが言えることではないけれど。
連続して降り注ぐ拳を全て交わしながら、体勢を整える。
そしてそのまま体を反転させ、ブンッ!
勢いのまま足を振り上げた。