嘘つき天使へ、愛をこめて


「単刀直入に訊くけどさ、サリの目的ってなんなの?なんで白燕に来た?胡蝶蘭の何を知りたい?」



……もうここまで来て隠し通すのも無理か。


1ヶ月じっくりかけて探るつもりだったのに、早々にゲームオーバー。

全く、あたしもなにをやってるんだか。


それでも最後なら、訊いておこう。

数ある疑問の中であたしが一番イラついている核の部分。


せめてそれだけでも知りたいと思うから。



「……胡蝶蘭はどうして族をやってるの?」

「……それはどういう意味?」

「そのまんまよ」



族という世界は、決して甘くはない。


喧嘩、恐喝、強姦、犯罪、抗争。


健全でいられるはずの普通の男子高生たちが、なにゆえわざわざそんな世界へ足を踏み入れるのか。


メリットなんて何も無いのに。


それでもここから離れない彼らにとって……将来がちゃんとある彼らにとって、胡蝶蘭とはどんな存在なのか、知りたかった。


族全体としてはあちこちの族を潰している時点で、もう引き返せないのかもしれないけれど。



「あんたといい、他の幹部メンバーも下っ端も……まるで族者とは思えない健全な人達ばかり。それなのにどうして族なんていう暴力と喧嘩世界の中にいなくちゃいけないの?」



感情という感情が消失していたあたしがなにかに興味を持つ事なんて、それ自体がほぼありえないことだった。


だからこそ、これは最後の好奇心からくる意味の示さない行動であり、単なるタイムリミットまでの暇潰し。


それ以上でもそれ以下でもない。

けれど、あたしは。

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