(A) of Hearts
「会社の顔である玄関での業務に責任と、やりがいを感じております」
「そうか。毎日館野さんの明るい笑顔のおかげで、あそこが華やかだしね」
「ありがとうございます」
なんの話?
このまま世間話でもするの?
わけわからないんだけど。
「しかしそんな館野さんには申し訳ないが、受付は四條さんひとりに任せようと思ってるんだよ」
「え……」
なんだ。
やっぱクビか。
だってわたし役に立ってないもん。バレちゃったよ。
外資系は必要ないとすぐ解雇と聞いたけれど、まさか自分に白羽の矢が当たるとは。しかもこんなにも早く。
泣けるよホント。
だっていくら暇な仕事とはいえ、お給料も貰えたし。辞めるときは、こっちから辞めたかった。
「四月になれば新入社員が入ってくるし、それまではなんとか四條さんひとりで」
「わたし、そんなすぐに解雇されちゃうんですか?」
部長の言葉を遮ってしまった。
なんだかバツが悪い。
「——解雇? まさか、人事異動です」
「じ?」
人事異動!?
「まだ辞令は出てないから、ここだけの話。新年度から専務が変わります。だから館野さんは専務秘書へ」
「——え?」
専務。
専務。
専務。
それって、さっきの?
「帰国した芦沢くんが専務に就任するにあたり秘書が必要。そこで館野さんが適任と判断した」
な。