(A) of Hearts
「仕方ないな」
ああ。
わたしの儚い夢よ、さようなら。
これで残業決定。悲しい。
「——抜けてる箇所、いまから手書きでいくか」
な??
もう一度コピーし直して、それからホッチキスを取って差し替える作業をしなくてもいいと? それなら大幅に減るけど。
「喋りでフォローすれば大丈夫だろ」
「せ、専務!!!」
「なんだよ」
「ありがとうございます!」
「なにが? てか資源の無駄遣い。これからは、こういう形式の資料をなくそうと考えてたところだから得したな」
「はい!」
ラッキー!
ついてる!!!
おかげで定時そこそこで仕事を終えた。
こんなにスッキリ終われたのなんて、秘書になってからはじめてかもーーーー!!!
だけど、
「——ゴッホゴホ」
「お風邪ですか?」
「器官に入っただけ」
やっぱり専務は体調が悪いと思う。
だけどそれも無理はないスケジュールで。
歓迎会へ顔を出すために詰めていたところもあるから、そのあと会社に戻ることも。
だからわたしは、なるべくつ詰まらないようにスケジュールを組んではいるけれど、この時期は仕方ない。
「ゴッホ」
「——やっぱり専務。それ風邪ですよ」
「かもな」
「無理なさらないでください」
「おお」
休んでください、と言えないのが辛いところ。だって休めるものなら、とっくに休んでもらう。
休日もない詰めた状態は、あと半月ほど続く。