(A) of Hearts

「——上司失格だな」

「そ、そんなことはないです!! そりゃ少し驚きましたけれど、ここへ連れ出したわたしにも非がありますから、これは連帯責任ですよ!!」

「男として失格だ。なにやってんだか、まったく俺は」

「専務」

「悪かった」

「謝らないでください」


悲しくなるから。
こんなの、ちょっとした事故じゃん。


「ゴッホゴホ」


だけどなんか散々な誕生日だな。
このままだと、後味が悪くなっちゃうよ。

どうすれば——?


「専務!」


そしてわたしは背伸びして、芦沢さんに口づけた。


「——な!?」

「これで、おあいこです。だから気になさらないでください。専務はいい男ですから、わたし得した気分です!いえーい!!」


わたしのとった行動に驚いて目を見開き、激しく咽かえる芦沢さん。


「だ、大丈夫ですか!!?」

「———参ったな」

「これしきのことで参らないでくださいよ」


するとようやく専務が呆れたように笑ってくれた。


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