(A) of Hearts
「いいでしょここ?」
「会社の近くなのに全然知りませんでしたよ」
「穴場だからね」
カウンターだけしかない店内なのにも関わらず、放ったらかしにされる感じが絶妙で、ゆっくり落ち着つける隠れ家っぽいクラシカルな感じ。
「よくご存知ですね」
「気に入ってくれた?」
「あ、はい」
わたしはカシスオレンジで藤崎さんブラッディーマリーというお酒を選んだ。
甘くてジュースみたいなカクテルのわたしとは違い、藤崎さんのはグロテスクな色をしてる。
「藤崎さんのお酒、なんか見た目がグロッキーです…」
「見るのはじめて?」
「はい」
「そういや俺もこれ最初見たとき気持ち悪いって思った」
ちょっとした健康を気遣って飲んでると続ける藤崎さんに笑ってしまう。
ブラッディーマリーはトマトジュースとウォッカの少し変わったタイプのカクテルらしい。
「笑っているけど、これってイギリスじゃあ二日酔いの迎え酒に飲むんだよ?」
「そうなんですか?」
「ちょっと飲んでみる?」
なんとなく興味津々。
だってトマトジュースだよ?
「結構美味しいから」
「——じゃあ、ひとくち」
喉ごしや口に含んだ瞬間、まさしくトマトジュース来たコレって感じだけれど、残る感じはやっぱりお酒。甘くなくサッパリしてる。
「どう?」
「意外といけますね」
「でっしょ? てかさ、飲む前にトマトジュース飲むと二日酔いしにくいから。これほんとに効くし今度試してみて」
それからも他愛のない会話が続き、思っていたより雑学の多い藤崎さんと楽しい時間を過ごす。気分もいい感じ。