(A) of Hearts
「——あの」
ああ…、降りたほうがいい。
送って貰えるとか少しでも思ってごめんなさい。
そんなわけがないじゃんバカなのわたし?
「もう二度とこのようなことがないようにいたします。申し訳ございませんでした。では失礼いたします」
「あ、運転手さん。K市までお願いします」
なんと。
スルーされてしまった。
しかも送ってくれるようだ。
「……申し訳ございません」
「いいえー」
それから運転手に断りを入れて煙草に火をつけた専務は、ゆっくり煙を吐き出していく。
なんだか身の縮まる思い。
てか怖いよ!
「あのう」
「なんだ?」
よかった。
いつもの芦沢さんぽい。
「これには、いろいろワケがありまして。なんて申しあげればよいのやら…」
「で?」
「申し訳ございません…っ」
「謝る必要ないと思うけど」
「……そうなんですよ。あ、いえ、すみません」
そして芦沢さんの携帯が鳴った。
表示を確認してから出る。
「もしもし」
ただいま11時45分。
最終は0時35分。
あと15分で今日が終わる。
誕生日の最後は芦沢さんと一緒か…。