(A) of Hearts

「——うう、バカ」


わたしのバカ。
芦沢さん怒ってたよ。

だけどあんなふうにわたしの前で電話されちゃうと、婚約者のアヤさんはぐっすり寝れるかもしれないけれど、わたしのほうがモヤモヤして寝れなくなっちゃうんだから。

いくら芦沢さんに惹かれているとしても、それは秘書として。そこに邪念が籠ろうがなんだろうが、その想いを仕事にぶつけたい、それだけなのに。

婚約者であるアヤさんとの時間を割いてまで一緒にいたいなんて思わないんだから!!!!!

でもって今日はわたしの誕生日なんだから!最低な気分だよ!


「バカ専務!本当に降ろすなっ!!!!」


寒いじゃん。


「はあ……」


バカは、わたしか。
ほんとガキ。

プライベートのほうのバキバキな携帯を取り出してアドレスを選ぶ。


「——やだもう」


画面がバグって文字が細かく上下するので、なかなかアドレスを選択できない。

そしてようやく発信へ指を掛ける。
コール音が続くなか、大きく深呼吸をした。


『もしもーし』


電話を掛けたのは友香さん。
その声を聞いたら安心してヘンな笑いとともに涙が溢れ出てしまう。


『チー!!?』

「ど、どもがざん。だずげでぐだざーーい」

『ちょっとあんた、なに気取りなわけ!?』

「……セカチュー」

『ふる…っ!!!』

「だってえええ」

『そこどこ?』

「……へ?」


え。
ここどこ?

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