(A) of Hearts
『チー??』
ホントさ。
なにやってんだろ。
『もしもし??』
「——すみません友香さん。こんな遅くに電話しちゃって。ちょっと叫びたかっただけなんです」
『なにそれ』
「ごめんなさい。ちょっと酔ってます。ではではアディオスッ」
『待って!ちょっとチー!?』
「もー、なんですかあ!? はやく児島さんとラブタイムに突入してくださいにょ」
『バカ!どこにいるの??』
それから何度も場所を訊いてくれた友香さんだったけれど、急に声が聞きたくなっただけとゴリ押しで携帯を切る。
「ふふふ」
ここでも必死になってしまって、なんだかおかしくて笑えた。
緊張したとき笑ってしまうのはどうかと思うけれど、こういうときは便利かも。
「——さて」
そして車道に体を向けランプのついたタクシーを探すことに専念。
あ!
「はい!乗ります!」
びっくり。
車通りが多くない場所なのにも関わらず、思いのほかすぐつかまった。
「どちらまでですか?」
「K市までお願いします」
「かしこまりました」
時刻はすでに0時を過ぎていた。
わたしは深々とシートに腰を掛け、大袈裟なほど大きく息を吐き出してから携帯を取り出す。